内容説明
親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。
著者等紹介
加納朋子[カノウトモコ]
1966年福岡県生まれ。92年「ななつのこ」で第三回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。85年に「ガラスの麒麟」で第四八回日本推理作家協会賞(短編及び連作短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
230
照代をあたたかく見守ってくれた佐々良の街、そして佐々良の人々。『不思議が起こる』その街で、不思議を現実のものとする意思、再び歩き出そうとする意思、そして自分の人生を生きるんだという力強い意思。そんな照代の強い意思の力を支えてくれる人のあたたかさを見る物語。『特別』なことは誰にでも起こり、人と人が繋がっていくのを見る物語。そして、『遠く遥かな空間も、そして時間も超える』ことができる、そんな人の想いを強く感じる物語。それは、佐々良の街に展開するファンタジー世界の中に、人のあたたかさを感じる、そんな作品でした。2021/08/18
しんたろー
197
シリーズ2作目は、理不尽な事情で佐々良へやって来た16歳の少女・照代を主人公に、前作のサヤを始め、3人の婆さん、エリカなどが絡む、チョッとファンタジーな青春物語。筆者らしい優しいタッチでサクサク読めるし、人との距離を考えたり、時折ホロッとさせられたりした。不満だったのは照代の両親の無責任さ…設定上で不可欠な要素なのは理解できるし、哀しい生い立ちも同情するが、それにしても最後は母親だけでも「母親らしい行動」を描いて欲しかった。好きな加納さんだからこそハードルが高くなってしまうが、次作も期待して読みたい♬2019/12/03
へくとぱすかる
193
両親の夜逃げのため、遠い親戚を頼ってきた照代が、何とか落ちついた先が、佐々良の町の鈴木久代の家。せっかく合格した高校の入学金を払わなかった両親にはあきれ果てる。これは最近の虐待と変わらない。15年前にこれをテーマにした作者は実に鋭い。未熟ながら懸命に生きようとする照代から目が離せないが、周囲の人々のそれとない支援も見逃せない。久代さんの一見突き放したようで、実は暖かい見守りには頭が下がる。話が後半ドラマチックに急展開していくが、人の幸せについて深く心に響かせてくれるラストとなる。そして幽霊の正体が意外だ。2020/07/26
ダイ@2019.11.2~一時休止
185
ささらその2。前作の雰囲気を残しつつ、新キャラが主人公として佐々良にやってくる。前作同様最後にジーンとくる。2015/01/23
佐々陽太朗(K.Tsubota)
141
人生とは何か。生まれてきたこと、生きることの意味はなんだろう。詩人・寺山修司氏は「さよならだけが人生ならば また来る春は何だろう」と詠んだ。この小説に一つの答えがあるのではないか。自分が周りを思いやり、周りが自分を気にかけてくれるならば、人はどのような状況であろうと希望を捨てることはない。魂が揺さぶられるような生き方が出来る。人一人の人生など無限の宇宙、悠久の時の中で何の意味も持たないかもしれない。しかし、人は心温まり、魂が揺さぶられるものを求めている。それが生きるということなのだと。2015/01/07