内容説明
「十六歳だった。あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている―」。本城えりが電車の窓越しに、賀集玲子の姿を見初めたのは、高校一年のことだった。玲子に憧れ、近づき、ひとつになりたいと願うえり。その強すぎる思いは彼女自身の人生を破滅へと向かわせてゆく。読み始めたら止まらない、衝撃作。
著者等紹介
朝倉かすみ[アサクラカスミ]
北海道生まれ。北海道武蔵女子短期大学卒業。2003年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞を受賞。04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
153
「平場の月」の朝倉かすみさんの長編一作目がまさかこんなに怖い本だとは思いもしませんでしたね。あとがきで書かれていますが文庫本が出たのが2008年の鼠年だとの事で今年丁度干支が一回りして読む事に何かのご縁を感じますね。天鵞絨(ビロード)と名付け崇める美少女・賀集玲子を盲目的に愛するヒロイン本城えりは自ら墓穴を掘り破滅の道に突っ込んで行く。えりは玲子を恨んでいる訳でなく危害を加えはしませんが無関係な人々に害を及ぼすのが何とも殺生ですよね。タマイの幽霊は実在するのか?多重人格の故なのか?どちらにせよ怖いですね。2020/01/15
5 よういち
87
「十六歳だった。あの人に出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている--」 高校生の本城えりは、通学中に賀集玲子を見初め、憧れ、友人として傍らにいるだけでは満足できず、ひとつになりたいと願うようになる。親友となった玲子は、やがて恋人を作り、留学することを決める・・・。えりの強すぎる思いは、こころの中だけでは留まらず、やがて彼女の人生を破滅へと導く行動をも起こさせてしまう。◆テンポよく進むストーリーで面白かった。えりのエスカレートしていく思いと行動は激しくも儚い。救われない物語。2018/09/07
おかだ
68
わお、エキセントリック。16歳の女子高生が同級生の女の子に一目惚れし、その気持ちを本人に打ち明けないままに拗らせまくり、なんか色々やらかした。女子校出身なので、女同士の感情が友だち超えてる場面はそこそこ見てきたし慣れてるけれど。打ち明けることができる想いなら、可愛らしいのかも。同性だから口に出せない、同性だから愛の表現がねじ曲がり、同性だからこそ行き着いた境地だったのかもしれない。とりあえず私はタマイ君という刺激的なアクセントに心を持ってかれた。おもしろいんだけれど、けっこう読む人を選ぶ話かもしれない。2019/05/09
siro
59
目惚れから始まった淡い恋。近づきたい仲良くなりたい、それ以上にひとつになり同化していきたいと焦がれる様は狂気。嫉妬心で玲子や彼氏に危害を与えたりしそうなものだけど、そんな普通(?)なことはしない。どこまで行くのか目が離せなくなり、最後はちょっとゾクリとしました。2017/02/06
チアモン
47
狂気を感じる作品だった。タイトル通り「ほかに誰がいる」という内容だった。女子高生が女子高生を好きになり・・・。でも好きになるほど主人公の行動が理解できなくなった。うーん。私には合わない作風だった。残念。 2018/07/14