内容説明
覚醒剤中毒死を疑われ監察医務院に運び込まれた遺体から未知の黒色胞子が発見された。そして翌年の五月、口から黒い粉を撤き散らしながら絶命する黒手病の犠牲者が全国各地で続出。対応策を発見できない厚生省だったが、一人の歴史研究家に辿り着き解決の端緒を掴む。そして人類の命運を賭けた闘いが始まった―。傑作エンタテインメント巨編。
著者等紹介
山田宗樹[ヤマダムネキ]
1965年愛知県生まれ。98年「直線の死角」で第一八回横溝正史賞を受賞。2003年に発表した『嫌われ松子の一生』が大ベストセラーとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とん大西
115
数年前から積読。現実のコロナ禍にもびびって4月や5月前半をスルーし、本日に至ってようやく手にとった次第。口から黒い粉を放ち瞬く間に絶命する黒手病。病原菌、感染経路、根絶方法-謎だらけの感染症が日本の5月を死の恐怖に叩き落とす。徒手空拳で未知の死病に挑む監察医・飯守、真菌研究室長・岩倉、感染症センター研究員・三和島。希望と絶望が交錯する三者三様の必死の思いに胸を打たれる。コロナの現実とオーバーラップするかのような国政の及び腰と世間の混沌。まだ根絶していない。収束したわけではない。大事なのは…これから。2020/05/24
H!deking
101
ぐぅー、面白かった!これまた色んな方向から面白いですね。原因不明な新種の病とそれに立ち向かう三人の研究者の話。って書いちゃうとなんだか面白くなさそうなんだけど、人物描写が丁寧ですっかりのめり込みました。そして最後はホロっとさせられる。自分に置き換えて色々考えちゃいますよね。これはなかなか良かったです!おすすめ!2019/04/20
モルク
100
遺体から謎の長いトゲを持つ黒色胞子が発見されるが、疑問を持たれるものの一例だけだったので放置される。が、翌年口から黒い粉を撒き散らし死亡するものが全国で続出。致死率100%、発症後30分で死に至る。しかし濃厚接触者に感染はない。この病に監察医、真菌研究所長、感染症センター研究員の3人が挑む。その性質、発症原因、感染経路何一つわからず、もちろん薬やワクチンはない。20年近く前の作品であるが現在のコロナとの闘いを見ているようで恐ろしい。そして菌やウィルスは変異しながら変化していく。まるで追いかけっこのように…2020/06/01
miww
96
口から黒い粉を吐き発症から30分で絶命、致死率100パーセントという恐ろしい症例が続出。感染経路を解明する為に編成された対策チームの監察医、衛生研究所真菌研究室長、感染症センターの研究員の戦いが始まる。徐々に明かされていく菌の正体や感染源、研究者たちを取り巻く人間ドラマに引き込まれて読む手が止まらない。とても面白かった。平時ならこれで終わる感想も世界中コロナ一色のこのタイミングで読む本作、自分の身にも迫りくる環境とリンクして、手を打てない感染症の恐ろしさに震え上がる。2020/04/14
アッシュ姉
91
黒い粉を吐き出しながら死ぬ謎の病。発生源や感染経路、治療法や予防法など何一つ分からない未知の病原体を解明する研究者たち。表紙のイメージからおどろおどろしい雰囲気を想像していたが、読みやすくて分かりやすい良作だった。歴史との関連も興味深く、終わり方も現実的。登場人物もリアルに書かれているのかもしれないが、欠点ばかり目について感動が薄れてしまったのが残念。2017/12/21