内容説明
時代は激しく動いた。徳川慶喜は朝廷に大政を返上。江戸幕府は終焉を迎える。だが新政府は追討令を発し、江戸に進軍を開始する。遂に土方歳三らは、壮大な計画に踏み切った。徳川慶喜を極秘に蝦夷地へ。数十万の幕臣を呼び、豊富な海産物・鉱脈を利用し独立国家を設立する。男たちの夢は、果たして叶うのか。新・幕末歴史小説ここに誕生。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部卒業。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年「眠りなき夜」で吉川英治文学新人賞を、85年「渇きの街」で日本推理作家協会賞を、91年「破軍の星」で柴田錬三郎賞を、2004年「楊家将」で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
114
新選組モノの出来上がりは、作者の視点によって様々。北方版新撰組は、特に後半、作者独自の視点から、ハードボイルドタッチの乾いた筆致でまとめられていく。新選組という作品に読者が何を求めるかによって本作に対する評価は別れそうな気がするが、一途に男の滅びの美学を通した哀切を望むのならば、本作は少し違うような気がする。苦境の中でも常に何かを追い求め、追い込まれても更に前へと進む、北方はそんな生き様を描きたかったのではないだろうか。タイトルの『黒龍の柩』は、そんな作者の思いを象徴しているように思えた。2019/01/30
ehirano1
108
どうした北方のオジキ!下巻は完全にバテバテではないですか!上巻で力尽きたのでしょうか?なんとか最後まで頑張られたみたいですけど、エンディングはまさかまさかの○○〇。しかし裏を返せば、これも土方歳三への愛着たる所以かと納得。書いているうちにそうなっちゃったんだろうねぇ・・・。2021/10/13
優希
79
史実の縛りから解放されたような土方像が描かれていました。激しく動く時代の流れの中で、壮大な計画へと足を踏み入れていく力が凄いと思わされます。己の信じた道を貫くが如く、北へと奔走する土方さんは男の中の男であり、まさに新選組副長に相応しく見えました。夢を抱き、叶えるべく突き進む姿は格好良いとしか言えませんね。勿論他の男たちもそれぞれの想いの中で駆け抜けたことでしょう。あえて土方さんの死を描かないことで、夢が続いていく余韻を残しているように感じます。ハードボイルドな新選組を堪能しました。2018/04/11
財布にジャック
69
死ぬつもりの闘いはしない。降伏もしない。という土方さんを北方さんなりの解釈で描いている、今までの新選組ものとは全く違った内容に、驚かされました。土方さんの生涯を描いた小説は、いつも涙なしでは読めないんですが、これは本を最後に閉じる時も今までにはない感覚でした。こういう新選組もありなのかなぁと、狐につままれたような気分です。でも、一番最初に読む新選組ものとしては、絶対にお勧め出来ません。2012/05/15
えみ
62
土方歳三という一人の勇将に、果てない夢を見させてもらった。否、これは過去形じゃない、今に繋がる永遠の夢。力尽きた者がいて、諦めてしまった者がいて、踏み出す勇気を持てぬ者、他人に希望を託す者…そんな者達の無念と涙を横目で見ながら只管真っ直ぐ夢に向かって白刃を振るいながら疾走する漢がいた。手酷い裏切りにも負けず、歪み切った生死の境で、己の信じる道だけを進む。しなやかで強い土方、ここにあり!「静」と「動」を巧みに使い分け、絶妙に融合させていき、最終章で「生」と「死」を描き切ることで見事調和を完成させている良作!2022/02/21