内容説明
受話器のコードを見るだけで、ライン上で交わされる会話が聞こえる女がいるという。半殺しにされたSM嬢、男の暴力から逃れられない看護婦、IQ170のウエイター、恋人を殺したキャリアウーマン。男女の性とプライドとトラウマが、次々に現代日本の光と闇に溶けていく。圧倒的な筆力で現在のコミュニケーションを描いたベストセラー。
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年長崎県生まれ。76年「限りなく透明に近いブルー」で第75回芥川賞受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文芸新人賞「村上龍映画小説集」で平林たい子賞を受賞。また、『トパーズ』『KYOKO』などで映画監督
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケロコ
35
狂気がラインになり連鎖。読んでいて背中にじっとり汗をかくような、そんな恐怖を感じた。私の知らない世界が有って、一歩間違えばというか、いつでも転がり込むことが出来るのだと思う恐怖。読み始めたときと読み終えたときの感情が大きく変わった。じっとり暑い夏には堪える1冊でした。2015/08/06
はらぺこ
30
リレー形式で主人公が次々に代わっていったけど何か似てる人ばっかりやった気がする。2016/04/22
ぴ〜る
20
再読。随分前に書かれた物語たけど、今も通ずる現代の闇…今はもっと濃いかもしれない闇がひとつのラインで繋がってゆくさまに再読だけど村上龍の世界にズルズル引き込まれてゆく感覚。2019/04/17
うーちゃん
19
18人もの登場人物がバトンリレーのように目まぐるしく入れ替わる、長編だが連作のような仕立てが面白い。タイトルの「ライン」とは(作品の中では)テレビやビデオのコードを通る 電気の信号のことなのだが、雑多で脈絡のない人間たちが、それぞれ持つ病理を萌芽させながら、歪な線=ラインの上に立っているように想像させる。道で人とすれ違うことが怖くなってしまう。「この数年、幼児虐待や殺人・自殺願望、ボディピアスや援助交際といったネガティブなモチーフで小説を書いてきて、この『ライン』に到達したような気がする」(あとがきより)2015/07/23
左端の美人
18
15年前に読んで衝撃を受けた作品。インパクトありすぎて忘れられませんでした。セブンイレブンの刺青をしてファミリーマートで働いている優しい社員。「人間というのはいろいろな自分があるんだと思う、接している他人に応じて人間は人格が微妙に変わる、本当は会う人ごとに別の人間になっているんだと思う、それは他人によって自分を確認しているからだ」2017/07/04