内容説明
複雑さと錯乱の快楽そのもののようなラ・ターシュ。セックス以外では癒せない夜に味わうシャトー・マルゴーの香り。非常に切なく非常に幸福な幼い時期を蘇らせたモンラッシェ―。女たちが八本の宝石のような名酒からひき起こす怖いまでに美しい官能を、驚異的な筆致で描いた極めつけのワイン小説集。
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年長崎県生まれ。76年「限りなく透明に近いブルー」で第七五回芥川賞受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文芸新人賞「村上龍映画小説集」で平林たい子賞を受賞。また、『トパーズ』『KYOKO』などで映画監督
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
136
8酒類(品目?)のワインからなる素敵な短編種です。普段、ほとんどワインを飲まない自分ですら、どんどん惹き付けられて読了です。扱われてるワインは『オーパス・ワン』『シャトー・マルゴー』『ラ・ターシュ』『ロス・ヴァスコス』『チェレット・バローロ』『シャトー・ディケム』『モンラッシェ』そして『トロッケンベーレンアウスレーゼ』となります。何がどんなワインがわからなくても全然問題ありません。でも、このうちの何本かでもどんなワインかわかってると楽しさも変わってくるのかなと。果たして皆さんはこのうち何種類わかりますか?2020/06/29
あつひめ
71
ワインだから似合う生きざまのような気がした。枯れ草のような芳香。舌がざらつきそうな渋味。女にはスッキリ爽やかーは、似合わない。どんな女にも肌が泡立ちそうなほどジワジワと感じるものがある。女って清いだけがいい訳じゃない。自分の意思に関係なく心が荒んで染み付くこともある。それがどんな飲み物よりもワインが似合う気がする。世の中にはこんな女たちが数えきれないほどいるんだと思う。なんだか、一人静かにワインをあけてみたくなる。ありきたりな感想だけど…そんな思いにさせる不思議な作品。嫌いじゃないな。2014/08/09
Shoji
39
8編の短編が収められています。主人公はいずれも女性、しかもエロティック。そして物語には、ワインが主となったり従となったりしながら絡んでいます。官能的であり、おしゃれで都会的な小説でした。2021/08/10
なつ
19
ちょっと大人の雰囲気のする1冊ですが、なんだろ、自分に酔いしれているようなそんな感じも受けた。途中で眠くなりながらも、どうにか読了。雰囲気を味わうように読む1冊なのかも知れない。2015/08/21
桜もち 太郎
15
8種類のワインをテーマにして書かれた短編集。お酒を一滴も飲めない自分だ。作者があとがきで「ワインを飲んで風景が異化してしまうことがある」と述べているが、もちろん異化した経験もない。しかしこの作品たちを読み進めていくに従い、女性たちが持つ何か名状しがたい違和感は何となく理解できる。誰に対しても心を開くことができないテレクラで売春をする女性、ワインの香りによりセックスを想像してしまう女性、自分は本当は死んでいるという幻想に包まれている女性、多くの女性が精神的に病んでいるように描かれている。→2022/08/09