内容説明
小笠原長時は、数多の戦国武将が範とする弓術・馬術・礼法の流儀を束ねる小笠原家の十七代目当主。門外不出の奥義書を父から託されるが、全く興味を示さず、当主たらんとする人心掌握術ばかり探している。だが、いくら威厳のある顔を作っても家臣や国人衆からの信頼は得られず、ついには武田信玄の女乱破に付け入れられる始末。自分に自信がなく、優柔不断で、流されるようにしか生きられない、情けない男が今わの際に見た希望の光とは何だったのか。目的は、時と場所、心の位が合致した時に初めて達成できる―。
著者等紹介
仁志耕一郎[ニシコウイチロウ]
1955年生まれ。東京造形大学卒業。広告業界で働いた後、2012年6月『玉兎の望』(講談社)で第7回小説現代長編新人賞、同年8月『無名の虎』(朝日新聞出版)で第4回朝日時代小説大賞を受賞し、作家デビュー。2013年5月、同2作で第2回歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
94
信州の松本平を本拠地とした小笠原長時の生涯が描かれているのだが、その割には短い気がする。 いくつか省略した感じで、特に、糾法の極意に辿り着いたと言われてもなにがどうなったのか? そのため感情移入できない。 ただ、最後の意外な展開にはびっくりさせられる。 これがあったからこの話を書いたのかも。 とはいえ、戦国の世にこのような人物がいたことが、極楽とんぼと呼ばれしぶとく生き残った人物がいた事がいたということが驚きだった。 2020/04/28
あかんべ
8
題名とイラストから、のぼうの城みたいな、のほほんとした物語を想像したが、負け続ける小笠原長時の物語。だまされ、裏切られ逃げる男。途中暗い気持ちになって放り出そうかなと思うくらいつらかった。長時の最後には驚いたが、小笠原諸島はここからってのにはもっと驚いた。2014/07/08
mushoku2006
4
読んでいて複雑な気分になりました。 弱い戦国大名なんてものに、いかほどの価値があったのだろう?という思いと、 そういう存在であったからこそ、会得するものがあり、 それが今に至るまで伝えられたということも高く評価すべきではないか?という思いが、 入り混じって、中々整理できかねています。 どうしても勝った者を、あるいは負けたにしても壮絶に闘った者を、 私も称えるような気持ちで戦国期の歴史小説を読んでしまうんですが、 それは偏った価値観なのかもしれないなあ・・・・・・。2014/07/03
ばかもんのパパ
1
表紙絵を見て勝手なイメージで選びましたが、中身は表紙絵とかなりのギャップがある暗さというか、重さ? しかし、いつの間にかのめり込んで、読みふけった作品でした。2019/01/10
まー
0
礼節を重んじる小笠原家の殿様のお話。こう言えば聞こえはいいが、実際は負けて逃げ回ってばかりのダメダメ殿様。城も終われよその領地に間借りして生き長らえる。それも70歳近くまで。極楽トンボとみんなに馬鹿にされて生き続ける人生。私個人的にはあまり尊敬できないかなあと。でもこんな殿様もいたんだなということで納得。2014/06/28