内容説明
孤独と自由を謳歌する、国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、６９歳。秒刻みのスケジュールに追われる、大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、５８歳。激動する世界情勢と日本経済、混沌とするメディア界の最前線に身を置く二人が、偶然、隣り合わせたパリ行きのファーストクラスで、ふと交わした『プラハの春』の思い出話…。それがすべての始まりだった。容赦なく過ぎゆく時に抗う最後の恋。愛着、束縛、執念…男女間のあらゆる感情を呑み込みながら謳い上げる人生賛歌。
著者等紹介
岸惠子［キシケイコ］
女優・作家。横浜市出身。『我が家は楽し』で映画デビュー。いまも映画、テレビ界の第一線で活躍している。４０年あまりのパリ暮らしの後、現在はベースを日本に移しながらフランスと日本を往復する。海外での豊富な経験を生かし、作家、ジャーナリストと多方面でも活躍。２０１１年フランス共和国政府より芸術文化勲章コマンドールを受勲。『ベラルーシの林檎』（日本エッセイスト・クラブ賞受賞）ほか著書多数（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
86
恋するのに年齢は関係ないですね。熟年の恋愛小説。いくつになっても恋ができるのは素敵なことだと思いました。激しい恋に潤いを取り戻していくのが眩かったです。でも結局は不倫ですし、純愛風に崇高に描こうとしているのが透けて見えたのが残念でした。この本の恋愛には全く憧れを感じません。不倫を美化しすぎているような気がします。2015/09/09
里季
75
女優岸恵子さんが好きだ。口角がきゅっと上がり、くっきりと美しく引いたルージュがとても美しく映える。こんな女性なら７０歳になっても恋ができるし似合うかもしれないが、実際私にとったらありえない話。出会いからして出来すぎている。５０代後半の男性はありとしても、７０歳超えた女性はもはや私の中では老人に他ならない感覚だ。私は６０歳だがもう、恋という感情はどんな素敵な男性がいたとしても落ちないと思うのだ。あるとすれば恋ではなく、慈しみ、親しみ、思いやり、支え合いのような関係だ。その方が魅力的だと思うのだ。2017/11/27
R
63
70歳の女性と50代の男性の色濃いを描いた物語。本当にこれだけで事足りてしまうのだけど、恋愛というものを物凄く丁寧に、判然と書いているので、読み終えて一連の恋愛を追体験したような気になる素晴らしさだった。男女二人が過ごしていく日々というものを現代なのに書簡（FAXやメールなんだが）でやりとりするという、一種古風な、歌物語による恋愛描写とも思えるところがよかった。男女の綾のすべてを詰め込んだ日々といった駆け足さもよかった。2021/06/05
Yunemo
45
やはり、非日常のファンタジー、こういう作品への憧れはありますね。それでもあくまでも非日常。現実的に考えれば、一番は経済的面、一般的な人々がこんな生活が出来はしません。でもできる層はある。心情的な繋がりはあり得ますでしょう。『わりなき』という言葉が持つ、『恋』という語彙は別にしても、はかなさ、と理屈と分別を超えた、この感覚は幾つになっても持っていたい感情ですね。ただ、他の多くの作品と同様、3.11が現実の世界に引き戻します。だからこそ、人が人でいられる。この感覚を真に感じて読了。人、男と女、やはり良い世界。2014/05/06
幹事検定１級
36
不倫、それも70代の有名な女性脚本家ととある企業の副社長を務める59才の男性を描いた一冊。 2人の交際を細かく書き綴っております。男性の方は妻も家族もおりながら、多忙なビジネスマンもしつつ不倫に没頭する姿に、心のゆとりはあるのかと思いながら読みました。別れた2人はその後どのような人生を歩んだのかと想像する読了です。(図書館本)2017/05/16
