内容説明
警視庁捜査共助課の白戸は指名手配犯たちの顔を脳に焼き付け、新宿の一角に立っていた。一日で百万もの“顔”が行き交う雑踏で、記憶との照合作業を密かに行う。犯人の罪状も動機も関係ない。覚えた顔を見つけるだけ。不意に目の奥が弛緩した。親しみを感じる顔が目に飛び込んでくる。すぐに五百の“顔”が並ぶ手帳を確かめた。間違いない、指名手配されている男だ。来る日も来る日も、勘を頼りに繁華街を彷徨い、いつ現れるとも知れない手配犯を探す“見当たり捜査”。見つける側であり続けるはずだった白戸が見つけられる側に転じたのは、一人の中国人マフィアを歌舞伎町で逮捕した時だった。
著者等紹介
羽田圭介[ハダケイスケ]
1985年、東京都生まれ。明治大学卒業。2003年、「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞してデビュー。08年「走ル」、10年「ミート・ザ・ビート」が芥川賞候補になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
67
警視庁刑事部捜査共助課に所属する白戸は、今日も指名手配犯を捕まえる為に街頭に立ち、記憶した顔との照合をする見当たり捜査を行っていた。すると親しみを感じる顔が目に飛び込んできて・・。ただひたすらに現れるかどうかも分からない指名手配犯の顔を覚え捕まえる。とても根気がいる作業で、しかもひと月に1人犯人を見つけられたらまだいい方。そういった地道な作業の焦燥感といったものが伝わってくる話ではあったのですが、間延びした感が否めませんでした。もう少しテンポよく読ませて欲しかった。題材が良かっただけに残念です。★★★2013/03/04
ままこ
64
指名手配の顔をひたすら覚えて見つけて捕らえる“見当たり捜査員”が主役の初めて読むタイプの刑事サスペンス。中盤まで地道な捜査と苦悩が延々と書かれていている。後半は公安が絡んだサスペンスで緊迫感があり面白かった。恋愛要素も哲学的な事も盛り込まれた一風変わった作品だった。2017/10/27
まーちゃん
60
見当たり捜査。数百人の顔を記憶し、街中を歩き回りたまたま見つけた指名手配犯を逮捕する、という特殊な仕事。当てもない、偶然任せの捜査方法。主人公の白戸は群衆の中で、手帳の中にある顔に出会うと自然に目の奥が緩むと表現する。/刑事モノが好みなので、とても面白く読めた!ようやく見つけ出した指名手配犯を仲間と連絡を取り合って、チームプレーで網の中に追い込んで行く。呼気を合わせての声掛け。犯人に仲間がいれば、追う者は追われる者に簡単に変わりうる。息詰まる緊張感。シリーズで他にもあるなら読んでみたいと思った。2015/09/07
おさむ
27
羽田さんの4作目はハードボイルド刑事小説。これ迄の作品とはうって変わった新宿鮫みたいなお話しでした。中身はやや?でしたが、舞台の新宿が土地勘があるので、楽しめました。2015/07/21
ちろ
26
本格的な警察小説。 これまで読んだ本と趣きが違いすぎて驚いたけど、どっしりとしたミステリーで面白かった!冒頭の、白戸が対象者を見つけた時に発する「目の奥が、弛緩する。」の表現から引き込まれた。見当たり捜査のノウハウも書き込まれていて、おもしろかった。またこんなシリアスものを読んでみたいです。2017/03/28