内容説明
国が決めた相手との結婚を控えている女と、結婚制度の存在しない国で生まれ育った男。玉の輿を狙う娘と、地位も財産もない移民の女性との結婚を願う七十歳の父親。両親の記憶がない少年と、息子への愛のため罪を犯した父親。競争のないユートピアで、愛情を独り占めしたくなった女。雑誌記者ロウドが出会った、いくつもの愛のカタチ。
著者等紹介
中島たい子[ナカジマタイコ]
1969年東京生まれ。多摩美術大学卒業。放送作家、脚本家を経て2004年「漢方小説」で第28回すばる文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なゆ
53
近未来の話でなかなか面白い。婚姻率の低下からの深刻な少子化、さらなる人口減少に悩む国々が、歯止めをかけるべく様々な解決策を考えたらどうなったか?結婚制度のないF国の記者ロウドが、いろんな国の結婚や家族制度を取材して回るような設定で話が進んでいく。結婚を完全にシステム化したJ国や、少子高齢化対策に失敗したかのようなN国は、極端すぎるけれどもどこか未来の日本のようにも思える。結婚や家族や親子の形は、この先どう変化するんだろう。「ヒメジョオン」の2人には、DNAレベルのシステムに負けないほどの愛があったんだ~。2017/03/23
風里
29
家族の在り方とはなんぞや。社会の在り方とはなんぞや。 淡々とむしろ優しい時間が流れていくのに、深く抉り考えさせられる。 システムは簡単でも複雑でも駄目なのだろう。それを運用するのが人間である限り。2013/01/06
そうたそ
27
★★☆☆☆ 近未来を舞台にある国の雑誌の取材記者が取材元の国で様々な結婚や育児の制度を目にして……という連作短編集。今までの中島さんの作品にはない世界観の作品で新鮮。現代では世界各国で多少の違いはあれど、基本的には結婚や育児に関する制度は根本では似通っている。この作品に描かれるほどの違いに比べれば、現代での違いなど些少のものだろう。国ごとでここまで違いが生まれてくる未来は本当に訪れるのだろうか。そうだとしたら、少し興味深い一方で、この作品を読む限りでは困難な問題も幾つとなく発生しそうだと思った。2015/02/27
coco夏ko10角
23
著者の作品は5冊目。今までと随分雰囲気が違うというか…いつもの感じの方が好きだな。こういうお話はもっとページ数かけて掘り下げてもらってじっくり読みたい。2015/05/16
吉日なり
17
読み始めは星新一か?と感じるほどたい子さんらしくない小説かと思いきや、淡々とした語り口と1つのことを掘り下げるこだわり(今回は題名通り、恋愛とは夫婦とはということ)はたい子さんですね。そして、それぞれの国の社会システムのなかで拘束されつつ浮かび上がる熱情。そこをも淡々と描いているのだけど、決して嫌いじゃない。2013/01/07