内容説明
一日のはじまり。この日常に不満はない、と、瑠璃子は思う。淋しさはたぶん人間の抱える根元的なもので、聡のせいではないのだろう。自分一人で対処するべきもので、誰かに―たとえ夫でも―救ってもらえる類のものではないのだろう。でも、と、聡の好きな桃をむきながら瑠璃子は考える。でもそれなら、春夫といるときに淋しくないのは一体どういうわけだろう。あんなにみちたりてしまうのは。
著者等紹介
江国香織［エクニカオリ］
１９６４年東京都生まれ。８９年「４０９ラドクリフ」でフェミナ賞受賞。「こうばしい日々」で坪田譲治文学賞、産経児童出版文学賞を、「ぼくの小鳥ちゃん」で路傍の石文学賞を受賞。２００２年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で第１５回山本周五郎賞を受賞。２００４年「号泣する準備はできていた」で第１３０回直木賞受賞
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感想・レビュー
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桜もち
68
一般的には「正しい」とされない恋愛を描いているが、「清潔感」とあかるい日差しに満ちているんだよね。ユーミンの歌みたいな恋愛がしたいのと同じように、江國香織の小説みたいな恋愛がしたい。恋人と会っている時はその人とずっと離れたくないと思ったし、でも一人でいる時間のときはその人が人生にいなくてもいいと思ったし、そのどっちかの状態の時はそれぞれもう一方の自分を別の女みたいに感じるのよね。それ、分かる。おんなじようなことが書かれていておどろいた。それって、なんだ、そんなにヘンなことじゃなかったんだ。2016/04/07
優愛
43
秘密があることで上手く嘘がつける、そして優しくもできる。「人は守りたいものに嘘をつくの」一人を愛し続けるだけでは生まれない気持ち。そこにもう一人いることで保たれる愛情。理想を現実にと思うから上手くいかない。理想は隠しながらそっと楽しむもの。2014/07/27
hitomi.s
33
「そんなん別れちゃえばいい」と言い切れたら一番なのだろうけど。なんとなく、わかるなーと、思って、しまった。目の前の、日常を、より現実的にするため、大切なことや誇らしさを視覚化するため、の非現実。とかなんとか。ま、決して道徳的ではないけどな。本気の癒しを求めてはりきって温泉に行って、お風呂も食事も観光も目一杯満喫したくせに、最終的に「やっぱり家、落ち着くわ」、みたいな。嫌な気持ちになるひとは少なくないだろう、という感想。2018/03/01
ひめ
28
「人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに。」ほんとにそうなんだろうか。私は正直でいたい。なんでも話したいし秘密も持ちたくない。でも、もしかしたら秘密を持った方がうまくいくのだろうかと、最近思ったりする。できないことだけど。2014/11/26
maiko
23
不倫を肯定する訳ではないけど、そういう気持ちが生まれることもあるのかな？と思わせる内容だった。外での恋が、スパイスになったり見直す素材になったり。最後はもう一歩何かしらの展開がほしかったな。そして、しほのことはなぜか好きになれない。自由奔放な瑠璃子に対して、聡にはもっとカタブツでいてほしかった。でも、江國さんの女性ならではの穏やかな文章はやっぱり好きだな♪2012/10/24
