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アサイラム・ピース

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  • サイズ B6判/ページ数 216p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336056283
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

地下牢に囚われた女、頭の中の機械、名前のない敵……不穏な精神状態と幻想が交錯する心象風景を実験的な文体で鮮烈に描いた作品集。

異国の地で城の地下牢に囚われた薔薇のあざをもつ女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる患者たち――孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。

母斑(あざ)/上の世界へ/敵/変容する家/鳥/不満の表明/いまひとつの失敗/召喚
/夜に/不愉快な警告/頭の中の機械/アサイラム・ピース/終わりはもうそこに/終わ
りはない

内容説明

異国の地で城の地下牢に囚われた女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる人々―孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。

著者等紹介

カヴァン,アンナ[カヴァン,アンナ][Kavan,Anna]
1901年4月10日、フランスのカンヌ生まれ。両親はイギリス人。旧姓ヘレン・エミリー・ウッズ。結婚してヘレン・ファーガソンに、その後離婚・再婚を経てヘレン・エドモンズになる。幼い頃から不安定な精神状態にあり、最初の結婚生活が破綻した頃からヘロインを常用するようになる。1929年に最初の小説を発表し、作家としてのスタートを切るが、その後も何度も深刻なメンタル・ブレークダウンに陥り、自殺未遂を繰り返す。『アサイラム・ピース』(40)からアンナ・カヴァンと改名、それまでの作品とは大きく異なったカフカ的な不安と幻想を描いた作品を発表するようになる。終末のヴィジョンに満ちた長編『氷』(67)が大きな注目を集めた翌年、1968年12月5日にロンドンの自宅で死んでいるのが発見された

山田和子[ヤマダカズコ]
1951年、北九州市生まれ。慶應義塾大学文学部中退。元『季刊NW‐SF』誌編集長。翻訳家・編集者。長く科学技術関係の編集に携わり、この分野でも訳書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

文庫フリーク@灯れ松明の火

129
皆川博子さんお気に入り作品と聞き初アンナ・カヴァン。「アサイラム」は精神病院・精神病療養所。狂気という底知れぬ闇の崖っぷちで、危ういバランスを保つ自身を冷静に、俯瞰するように見つめる乾いた筆致の短編集。著者は完全なる狂気に呑み込まれぬよう、小説を書き、医師の管理のもとヘロインと共存したという。不安や焦燥感・破壊衝動・被害妄想・孤独感・・大なり小なり現代に生きる私にも通じる病む心は、75年前の作品とは思えない。「汝の魂のもとから、どこへ行くというのか?汝の存在のもとから、どこに逃げるというのか?→2015/02/17

藤月はな(灯れ松明の火)

76
足元がぐにゅぐにゅと不安定なのに世界と対峙しなければならない孤独と付き纏う不安、「誰かに狙われている」という強迫観念、それが「自分だけの妄想ではないか?」という考えを抱くことで続く底無しの自分への不信。助けを求めることも悲鳴をあげることも逃げることもできずに蹲る心。心が病んでいくのが分かるのに色々な柵のために身動きもできずに自分を責めるばかりの苦痛。どうしようもない不安を抱え、時に自分を拒絶する世界と対峙しなければならない無限に続くかと思われたどん底の情緒不安定だった気持ちを呼び起こすような作品群。2013/03/09

miyu

72
混乱した精神状態の自分を高みから俯瞰して見つめているような、そんな冷めた感覚。粗い画面がある一瞬だけ鮮明になり、どうしようもない虚無感が広がるが、それが不思議と不快ではない。まだ多感な学生だった頃にカヴァンの他作品を読んだ。古びて大した魅力も感じない本だったが、読んだ瞬間に虜になったのを覚えている。壊れやすい心にするすると音もなく密やかに入りこんできた。歳月が経ち余計な経験を山のようにしてきた今、当時ほどの衝撃を感じることはなかった。しかし意外にも懐かしいような、ホッとするような自分を抑えられなかった。2014/08/31

どんぐり

63
「母斑」のほか表題作を含めた14篇からなる短篇集。ヘロイン中毒で精神を病んだ作家の人生の軌跡に興味をもったが、作品自体に共感を覚えるようものはなかった。ちょっと難解。2018/06/17

兎乃

59
1940年"アンナ・カヴァン"として初めて発表した作品。翌年1941年、ウーズ河に自ら身を投じたV・ウルフをふと思い出す。「母斑」の不穏な空気を呼吸するうちに、低速でカヴァンに落ちてゆく。やがて静かな絶望が室温を下げ、氷室に入ったような閉塞感に包まれる。そして小石を飲み込んだように沈黙。静寂なカヴァンの文体という部屋。大勢の人が鳥の歌声を耳に止めることもなく急ぎ足に行き交うコンクリートの通路は、迷い込んだ城の扉に舞い戻り、今夜もカヴァンの声に閉じられる。シンプルな装丁にも納得。良い本。しばらく傍らに。 2013/02/06

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