内容説明
肉体の束縛を離脱した主人公は、時空を超え、太陽系の彼方へと宇宙探索の旅に出る。棘皮人類、共棲人類、植物人類など、奇妙な知性体が棲息する惑星世界。銀河帝国と惑星間戦争、生命の進化と諸文明の興亡。そこでは星々もまた、独自の生を営む生命体であった。そして、銀河という銀河が死滅する終末の時がやって来る。星々の精神と共棲体を築いた主人公は、至高の創造主「スターメイカー」を求めて旅立つが…。宇宙の発生から滅亡までを、壮大なスケールと驚くべきイマジネーションで描いた幻想の宇宙誌。そのあまりに冷たく美しいヴィジョンゆえに「耐えがたいほど壮麗な作品」（Ｂ・Ｗ・オールディス）と評された名作。
著者等紹介
ステープルドン，オラフ［ステープルドン，オラフ］［Ｓｔａｐｌｅｄｏｎ，Ｏｌａｆ］
１８８６‐１９５０。イギリスの作家、哲学者。『最後にして最初の人類』（１９３０）、『スターメイカー』（３７）、『闇と光』（４２）など、独自の哲学的思弁と神話的想像力に満ちた壮大な宇宙年代記を発表し、絶賛を浴びる
浜口稔［ハマグチミノル］
１９５３年、沖縄県生まれ。明治大学理工学部教授
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感想・レビュー
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ケイ
144
SF的思考でなされた哲学書とでも言うのかな。ニーチェは神は死んだといい、ヨーロッパは第一次大戦を経験した。神は何処にいるのか？宇宙を創造したのは誰か？その創造者〜スターメイカーを求めて、思索の旅に出る。まさに思索の旅だ。宇宙船などない時代。思考のみが宇宙に旅立ち、様々な生物やその生活に触れる。そこでもある戦争。誕生、衰退、滅亡。そして、地球という惑星を宇宙から見てみた時の人間の卑小さ。哲学的で、特にストーリーめいたものはないのに読みやすいのは、訳者の力量だろうか。2017/07/09
harass
59
英国の平凡な青年は自分の精神のみで時空を超えて宇宙を旅するのだった。1935年出版時最新理論だったビックバン理論に則って繰り広げられるとてつもないスケールの宇宙観察記。さまざまな非人類の生命体による社会と文明の発達と衰退、惑星間の抗争、銀河連合間での戦い、そして宇宙の死と誕生。それらを司るスターメイカーという存在。のちのSF作家や科学者に影響を与えたとされる作品。当時の世界大戦間の思いが込められている。慄然とするビジョンがあるが抽象的な内容が多く、感情移入ができない。小説というより新興宗教の本に近い印象。2017/02/17
磁石
21
テクノロジー／思想を呪具としたコスモスの魔術的な召喚、コレがあまたの幻想小説と袂をわかつ独創性。……訳者のあとがきにあった解説文。神話や小説あるいは歴史書として見るから、頭がこんがらがってしまったのかもしれない。ただ一人の人間／どこにでもいる自分が、宇宙の創造者たる「スターメイカー」を召喚することができる、ある種の魔導書のようなものと捉えればいいのかもしれない。……WWⅡで引き裂かれたものは、これほどの力でなければ繋ぎ直せなかったのだろう、あるいはだから現れることができたのか。読後には何かが変えられた2017/05/22
磁石
20
星の／宇宙の／銀河の創造者＝スターメイカー、彼を探し彼を求める旅。この世に無窮の楽園を築きながら、他方で無慈悲な地獄をもたらす二つ顔の神。どこまでも慈悲深くかつ底なしに冷徹な無関心で、被造物たる我々を見下ろしつづける、ユートピアも虐殺も絶滅も等しく慈しむ。そんな彼の姿も意図も理解できない、創造主と被造物の間には絶対に越えられない壁がある。ただただ掌の上で踊らされるだけ……。それでも彼を望み続けてしまう、そうであればあるほど畏敬の念を抱かざるを得ない。……スターメイカー、凄まじいビジョンだった。2017/03/13
白義
16
ありとあらゆるSFの中で、究極のSFというものが一つあるとすれば、この本こそまさにそれだ。宇宙を生きる生命たちの多彩な興亡に存在論的な精神の上昇、そして多元宇宙創造に至るまでの、思弁と科学を極限に盛り込んだ神話叙事詩。ダンテの神曲やミルトンの失楽園と共通する古典的構造を備えながら、あるいはそれらをも超えているかもしれない。この本を知る作家たちが、揃ってこの本に関しては冷静でいられないのも納得。最後にして最初の人類と並んで、現代と未来の神話として必読の書2012/02/24
