文学の冒険<br> カフカの父親

文学の冒険
カフカの父親

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A6判/ページ数 256p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336035912
  • NDC分類 973
  • Cコード C0397

内容説明

文豪ゴーゴリの愛妻は、吹き込まれた空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった。グロテスクなユーモア譚「ゴーゴリの妻」。オペラ歌手の歌声の重さや固さ、色、はては匂いや味についての怪論文「『通俗歌唱法教本』より」。ある朝突然口から飛びだしてきた言葉たちが意味の配分をめぐって大論争を繰り広げる、ナンセンスな味わいの「騒ぎ立てる言葉たち」など、奇抜なアイデア、日常生活にぽっかり開いた裂けめを完璧なストーリーテリングで調理する、現代イアリア文学の奇才ランドルフィ、初の作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

春ドーナツ

21
イタリアの短篇集。その中の「無限大体系対話」を何気なく読み始めた。「朝ベッドで目覚めると、まだ生きていることに驚くのはともかく、何もかもが昨夜とまったく変わっていないのには呆れるばかりだ。」 顔がにやける。その刹那、ウォーターサービス巡回中の店員と目が合った。昼下がりの喫茶店は混み合っている。客たちの会話は単一のノイズと化して、彼の気配を消すには充分過ぎる音量だった。・・・油断した。あまつさえ、ふたりは目を反らさない。私は時間の止まった暗黒世界に吸い込まれる。と言うか。消えてしまいたい。急募タイムマシン。2018/10/24

kariya

16
ゴーゴリの妻は空気の量で姿形の変わるゴムの人形だった。主な用途は言わずもがな。奇怪かつ滑稽でありながら、どこかペーソスの漂う「ゴーゴリの妻」を始め、騙されて教わった全く架空の言語に憑り付かれた男の悲喜劇「無限大体系対話」、数トンの重みがあったり虹色に輝いたりする歌声について至って真剣に論述する「『通俗歌唱法教本』より」など、不条理と黒い笑いに満ちた短編集。これが父親だったら確かに確執が絶えないだろう、と今まで以上にカフカへの同情心が募る表題作「カフカの父親」も忘れ難い。嫌な意味で(笑)。2009/09/11

ネムル

14
ファンタスティックな想像力をときにナンセンスに、シュールに、グロテスクに、スラップスティックに羽ばたかせる、なんでもござれの短篇集。ゴーゴリの奥さん(ダッチ)を巡る「ゴーゴリの妻」とか、撃ち殺した死体の右手に拳銃を握らせるか左手にするか延々悩むアンチ・ミステリ風の「ころころ」などがナイス。2009/08/12

sankichineko

10
「通俗歌唱法教本」がお気に入り。オペラ歌手の声が直撃して死者が出るなんて素敵。ルチア・ポップの歌声に一刀両断にされるなら、死んでも悔いはありません。きっと日本刀でスパッとやられるくらい切れ味鋭く、痛みを感じる前に昇天出来るでしょう。2019/01/28

rinakko

9
すこぶる奇妙な味わいがよかった。楽しみにしていた表題作は唸るくらい短くて、一読したら忘れられない作品だった。他にとりわけ好きだったのは、「『通俗歌唱法教本』より」(音の重さと固さ、色彩、その他の特性について…)と、「ゴーゴリの妻」。「ゴーゴリの妻」は、“生涯秘密にしていたニコライ・ワシリイヴィッチの妻に関する複雑な問題”って、いきなりそれかよ…と唖然としつつ。「狼男のおはなし」や「ころころ」、「キス」も面白かったし、「手」の気持ち悪さも後をひく。2013/10/07

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/427923
  • ご注意事項