内容説明
真島圭太・２９、律儀で真面目、振り回され上手なモラリスト。繁田樹・３３、上昇志向が空回りする、女好きバツイチ研究者。仲杉幸彦・２８、チャラい言動で自爆しがち、人なつっこい営業マン。斎木匡・３０、人の気持ちをはかるのが絶望的な不得意なイケメン。仲良くもなく、友だちでもない四人の青年。ひょんなことから連れ立った旅先に、それぞれの人生の答えがあった！…のか？ちぐはぐな会話、歯がゆい距離感。四人それぞれの、ひそやかな決意―第７回小説宝石新人賞受賞作収録。
著者等紹介
麻宮ゆり子［マミヤユリコ］
１９７６年埼玉県生まれ。大学非常勤講師。２００３年小林ゆり名義にて第１９回太宰治賞受賞。２０１３年、収録作の「敬語で旅する四人の男」で第７回小説宝石新人賞を受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
213
繋がりがあるような、無いような、友達の友達みたいな、ゆるーい繋がりの男４人。お互い敬語で話をする、そういう距離感。仲がいいわけでも悪いわけでもない、だけど一緒にいても別に嫌じゃない。女だとこうはいかないだろうな、と思う。いい感じで干渉しない程よい距離感は、男同士だからこそ、なのかも。そんなゆるーい関係の男４人があちこち旅しながら、ひとりひとりの事情とか、現実とかに向き合いながら、何となく繋がり続ける。微妙にかみ合っていなくて、とぼけていて、でも鋭いとこ突いてる会話が絶妙におもしろい。旅する連作短篇集。2014/09/01
kishikan
180
最近出会った作家さんでは、柴崎さんに並び鮮烈。といっても、ストーリが激しいとか、劇的な内容というわけではなく、淡々とした日常を優しさ溢れる文章で描き、しかし残像がいつまでも残る内容と表現力が凄い。とある会社の4人の同僚・先輩・後輩、皆一癖あったり訳有りだけど、会社での出来事、しがらみ、そして過去との決別のための苦闘、今を乗り越えようと必死な姿やさりげない友情が美しい。斎木君の行動にハラハラしたり、鳥取砂丘での中杉君の「しんかいさあ～んッ」に思わずうるっときたり、男だけの旅なのに心揺れる作品。今後も期待大！2014/08/27
シナモン
179
タイトルの「敬語で旅する」が登場人物4人の関係性を物語っている。みんなそれぞれ一癖あるけど、つかず離れず、そして無理することなくお互いを受け入れているのが心地良かった。その中のキーマンが斎木くんだと思うんだけど、自分の生活ペースを決して乱さない姿勢(お風呂は必ず夜10時とか朝食は必ずパンとか)は半端なくヒヤヒヤする場面も。でも考えてみると自分にもそういう面ってある。合わせてくれてる周りに感謝したいと思った。いろんな人がいて社会は成り立ってる。さりげない優しい風が吹きぬける〜そんな一冊でした。2020/11/16
ちょろこ
124
斎木くんが良い一冊。なんだか良かった。なんとなく寄り集まった男子4人が旅をするストーリー。みんなそれぞれ心に曇りを抱えていて、旅することで晴れやかの一歩手前まで…という自然さが良い。中でも言葉を正直に受け止める斎木くんの存在が良い。アスペルガーゆえと思われる正直な言葉が時に救いに時にナイフのような両局面を併せもつ、その描き方も良かった。飴と鞭のような笑いがあるけれど実際、自分がアルエさんだったら斎木くんの言葉と態度には泣いちゃうだろうな。大切なのは時間と理解なのかな。マニュアルを残したお母さんの愛には涙。2023/10/31
ﾓﾙｸ
122
離婚して佐渡に渡り住む母親に11年ぶりに会いに行くことになった真島。その旅に友達でもない男３人が同行するという話から、彼らそれぞれのいわくのある旅に同行する連作短編集。各々何かを背負っている人たちであるが、この４人の距離感がいい。成り行きで行った旅から何となく支えあっていく姿がいい。押し付けがましくなく、ちょっとかわいた関係。発達障害であろうと思われる斎木のことをまわりが理解しさらりと受け流している対処法が参考になった。それにしても、真島…いいやつ。2019/10/08
