出版社内容情報
◆選評より
読み始めてすぐに、これが受賞するだろう、という手応えを感じた。
──有栖川有栖氏
読後、思わず、「パッサカリア」のCDを探し、かけてしまった。要するに、そうさせるだけの作品であった。
──北村薫氏
海野さんは間違いなく書ける力を持った人で、安心して推薦できる。
──高橋克彦氏
文章力、描写力、人物造形力等において、他の候補作を圧倒していた。
──田中芳樹氏
内容説明
愛した女の死がもたらしたのは、哀しみだけではなかった。精緻に描き上げた男と女の物語。満場一致、驚嘆すべき新鋭、堂々のデビュー。傑作ハードボイルド!第十回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
著者等紹介
海野碧[ウミノアオ]
1950年長野県生まれ。「海野夕凪」名義で応募した『水上のパッサカリア』で第十回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
49
二人と一匹の暮らしが思わぬ方向へ流されていくのはまるでパッサカリアの曲の抑揚のような気がした。今、パッサカリアを聴きながら強と菜津、ケイトの出会いから日々の生活に思いを馳せてしまった。新しい土地で過去を捨てたような静かな生活。何かあるとは思っていたが・・・こんな展開を繰り広げるとは。北村さんの選評ではないけれど、物語の中にこの曲は欠かせないものになっている。そして、動物好きの私にとってはケイトのことがとても気がかりだった。もしかしたら視点は違うのかもしれないけど、強を最後まで支えられるのはケイトだから。2012/11/12
松下左京
24
とある避暑地の高原で最愛の妻を亡くした男が一人いた。そこに彼のかつての「仲間」が帰ってきた! 彼は「始末屋」の一員だったのだ!2018/12/13
nyanco
12
奈津との二人の暮らしぶりがとても良かったが、この前半がやたらと長く、後半の「始末屋」の仕事はバタバタと片付けた感が否めない。描写が細かく、読むのにやや疲れました。次作に期待し、次作も読みたい。2008/11/25
きらら@SR道東民
10
説明口調のやたら長い文章に始めは戸惑い気味でしたが、、ハードボイルドな展開に後押しされ楽しめました。(何と言っても有栖川さんが選評している事だし)裏社会から足を洗ってひっそり暮らしていたところ、初めて本気で愛した女性を失い、また「始末屋」家業に手を出す事になる・・・ランボーと、レオンと、スティーヴン・セガールをごちゃ混ぜにした感じ。愛犬(強面に反して気は小さい大型犬)のケイトがいい味出していました。2013/09/26
藤枝梅安
8
全六章からなる長編。第一章、第二章は純愛小説の趣。主人公と亡くなった同棲相手との生活が語られる。主人公の過去や、この時点に至る経過は語られない。ただ、主人公が過去を捨て、自分を知る人々から姿を消し、菜津という女性と静かに暮らし、その女性が亡くなって一人になった主人公の思い出を彩るのがヘンデルのチェンバロ組曲第七番ト短調の「パッサカリア」である。2010/05/19