内容説明
「奴に城を取らせる。そして俺は国を取る。」乱世に雄飛するため、希代の謀略家・真田昌幸が仕組んだ秘策とは?(表題作)強大な豊臣水軍を前に、城に篭もる鯨取りの親方が仕掛けた驚愕の大反撃!(「鯨のくる城」)戦国の世、大勢力がふづかる狭間で、ある者は平身低頭し、ある者は乾坤一擲の勝負に出る。生き残りをかけ、なりふり構わず戦う人間を熱く描いた渾身作全五編!
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。外資系企業に長らく勤務後、文筆業に転じ、歴史小説や歴史に材を取った作品を相次いで発表している。2012年『国を蹴った男』で第34回吉川英治文学新人賞を、’13年『巨鯨の海』で第4回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
176
伊東潤の時代物短編集はやっぱり良い。どの話もさらに掘り下げて長編にしてほしいと思う。表題作は、もちろん良いが他の作品も素晴らしい。ひとつ欲を持てば何かを失い、欲を捨てれば何かを得て生きていく。生きる者、死んでゆく者は人それぞれ。それは、堪えて滅びを招いたり、死中に活を求めたり、時には手のひらで踊らされたり、かなわぬ切ないことでもあり、欲を捨て分をわきまえたりと様々。戦乱の世に生死をかけて生き残りをかけて、なりふり構わず、誰もが未来に向けて戦う必至な姿に心を踊らされた。【読んだ本登録800冊目】2021/05/10
yoshida
162
歴史好きな私が最近よく手にするのが伊東潤さんの作品です。比較的マイナーな武将が活躍する所に、歴史好きの心がくすぐられます。必死に生き残りを図る武将達の短編を5編収録。黎明期から後期の後北条家が絡む話しが多い。「鯨のくる城」が白眉か。豊臣家の小田原攻めで、強大な豊臣水軍と対峙する鯨取りの親方。起死回生の一撃に唸らされる。「見えすぎた物見」では北条家と上杉家の二強の間で揺れる佐野家の生き残り策が実にリアル。生き残りの為の必死さが伝わる。興味深い短編集。より深い歴史の魅力に触れたい方には格好の作品だと思う。2017/04/19
岡本
117
解説の上田氏曰く「滅び」をテーマとした5作品の短編集。唐沢山城の佐野氏、伊豆国衆の高橋政信、北条家の猪俣邦憲、武田家の今福氏、そして北条家の板部岡江雪斎。後世に家を残した者、悪名のみが伝わった者、人知れず滅んだ者など関東近郊の武将たちの物語。表題の「城を噛ませた男」は特にお気に入り。2019/04/07
遥かなる想い
100
戦国の世に 生き残りを賭けた男たちを 描いた短編集である。大国の狭間で 小国がどう生き抜くのか…根底に流れる滅びの美学が いかにも日本的な雰囲気を醸し出す。 ややワンパターンな展開が残念だが、 関東に題材を置いた本作品は 興味深い。2022/05/09
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
68
戦国の世を舞台にした短編集。といっても信長や秀吉のような英傑ではなく、彼らの間に挟まれ汲々としている地侍や小国の領主たちが主人公。領地領民を守るためひたすら恭順し、日和見主義といわれようとも強者に従う者あり、己の才覚でこの戦国の世に台頭しようと画策する者あり。表題作の「城を噛ませた男」は普段ヒーローとして描かれることの多い真田昌幸。戦国の世で己の出頭のためとはいえ、なりふり構わぬ策謀。ここまで冷徹に敵を欺くのか。一方、「鯨のくる城」での豊臣水軍を前にした高橋丹波の仕掛けた戦は読後も爽やかであった。★★★+2014/11/30