感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
127
ペベンシーの丘の上で妖精パックに出会った兄妹は、魔法で呼び出された歴史上人物の物語を聞く。活写される英国歴史の変わり目は戦に直結しており、時代相応の帝国至上主義な高慢さと共に勤勉な著者の自負が現れている。ウィーランドの剣の話は『ロビンソン・クルーソー』後半の船旅を彷彿とさせる冒険譚に発展。百人隊長の話も英雄に対する著者の憧憬が顕在化したストーリーで、上層や周囲の力関係に翻弄される前線の視点でそこはかとなく虚脱感が漂っている。この他は小品揃いで、皮肉と風刺の効いた英国らしい笑劇やメタ効果が登場してより多彩。2022/06/29
かもめ通信
29
光文社の古典新訳っててっきり既に他に邦訳があるものを「新訳」で、という企画なのかと思っていたのだけれど、この作品、本邦初邦訳なんだそう。物語を読むうちにシェークスピアの作品へ思いをはせてしまうのはもちろんのこと、ごく自然にイギリスのオックスフォードシャー州にあるウェーランドの鍛冶場(Wayland's Smithy)という墳丘やそこにまつわる伝説を知り、ノルマン人とサクソン人の争いの歴史に思いをはせ、現在のイギリス王室の基になる系譜を学び、宗教問題についてまで考えさせられてしまうなかなか奥深い物語だった。2016/09/28
えりか
26
キプリングはジャングルブックの印象しかなかったのだけど(それもかなりうろ覚え)これも面白かった。妖精パックと過去の騎士たちが子供たちに語る昔の物語。昔話。神話。そして詩。子供の時に読んでたら、もっとワクワクして楽しかっただろうなと思う。自分の前にもパックが現れてくれないかなと想像していたにちがいない。その土地の、そこにいた人々の物語。土地も人々の意志もずっと受け継がれていくし、繋がっている。面白いなぁ。いいなぁ。好きだなぁ。続編もあるようなので、光文社古典新訳から出ないかなぁ。読みたいなぁ。2016/01/29
ヴェルナーの日記
23
シェークスピアの「夏の夜の夢」に登場する妖精パックをホスト役にし、ダンとユーナの兄妹にブリデンの歴史の1コマを、当時の人物を呼び出して、当時の物語を語らせる歴史物語。10篇の短編から編まれている。これは著者キプリングが、自分の子どもたちに歴史に興味を抱かせるためと創作された。本作には続編『ごほうびと妖精』があり、早く邦訳されることを期待する。2014/08/23
北風
15
エブリデイ・マジックかと思ったけど、歴史小説だった。中世ヨーロッパの歴史を妖精が登場人物を召喚して、子どもたちに語って聞かせるという……。ジャングル・ブックやキムが面白かったんだけど、いまいち楽しめなかった。なんでか歴史モノとは相性が悪いんだよな。これだけ昔の話なんだし、普通にフィクションと同じように読めないもんなんだろうか?2022/02/09
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- 和書
- 兄おとうと