内容説明
深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。
著者等紹介
朝倉かすみ[アサクラカスミ]
1960年、北海道生まれ。2003年、「コマドリさんのこと」で第三七回北海道新聞文学賞、’04年、「肝、焼ける」で第七二回小説現代新人賞受賞。’09年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
281
6話連作短篇+ボーナストラック。2008年に刊行されたのね。いや、時事ネタが入っているからさ。クラス同窓会の3次会でね、田村を待ちながら駄弁っている齢40の面々+メモ魔のマスターを加えて。ボトルはJ&B(又はヱビス)。只々駄弁っているだけなんだけど、ひとりひとりが回想に耽る訳よ。あーでもない、こーでもないと考えていて、また駄弁りにシンクロする様に帰って来るのね。面白い構成ですねーって読み進めると、酔いも醒めるよね。最終話のラストの一節に訪れる感情は何なんだろう。名前が付いていないんじゃないかと思う。2023/12/05
ウッディ
269
小学校の同窓会の三次会、ススキノのバーで、30年近くぶりに会えるはずの田村を待っている5人の男女。田村との思い出話に花を咲かせながら、酔っ払い達一人一人の過去のエピソードが語られ、その人の輪郭がはっきりしてくる。そしてくり返される「田村はまだか?」のセリフ、深夜のバーの雰囲気が伝わるリアル感や構成も面白く、田村はバーに現れたのか、などなぜか惹きつけられる一冊でした。同じ時間を共にした同級生達にも、それぞれの人生があった。「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」そんな田村の言葉が胸に染みました。 2020/05/16
おしゃべりメガネ
229
まず何よりもタイトルのインパクトがハンパないと思います。「そのタイトルの意味って?」と思っていたのは読み始めの頃だけで、すぐにそのタイトルを軸に物語が本当にいい意味でゆったりと静かに進んでいきます。要はプチ同窓会のお話で年月がそれぞれにもたらした‘変化’を受け止めて、リアルな人生をどこまで現実的に見つめ、歩んでいくか。そしてこれからをどう見据えていくか云々をBARでの会話を中心にお互いの近況をぶつけ合いながら、語り合い、そしてある意味‘再生’していきます。自分の人生の‘これまで’と’これから‘です。2010/11/16
ちょこまーぶる
221
面白かったな。一人の同級生を待っている間のバーの酔っ払い達の若かりし頃の浮世話はクラス会の定番なのではないだろうか。そして、まさか田村が交通事故に合うとは思わなかった。いつバーに到着するんだろうか?とワクワクしなが読んでいたので尚更でしたね。それから、本の表紙の力の抜けた感じが最高でした。2012/07/21
❁かな❁
215
初めて朝倉かすみさんの作品読みました*深夜のバーにて、小学校のクラス会の三次会で田村を待つ男女5人。待ちながら登場人物達の色んな過去の思い出や日常がわかる連作短編集。皆40歳なので色んな人生を歩んでいる。タイトルの通り「田村はまだか」と読者も一緒の気持ちになって待ってしまう。マスターもいい味を出している。第三話の加持千夏の話が切なくてキュンときた。本当は「もう」そんな歳だけど「まだ」って思ってしまう気持ちもわかる。大人の哀愁漂う雰囲気で最終章は良かったなぁと思えるような作品*吉川英治文学新人賞受賞作。2017/09/02