内容説明
昭和最後の夏に、札幌で起きた密室連続殺人事件。それは、伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が発端だった。吝家を覆う殺意の霧の中に浮かぶ忌まわしき宿縁―。妖艶にして華麗、絢爛という言葉さえ似合う不可能犯罪の連鎖に、若き推理の天才・南美希風が挑む。瞠目せよ!そして驚愕せよ!奇跡を現出して、読者を魅了する本格の旗手が放つ渾身の巨編千八百枚。
著者等紹介
柄刀一[ツカトウハジメ]
1959年北海道生まれ。鮎川哲也編の公募アンソロジー『本格推理』シリーズ(光文社文庫)への参加を経て、’98年に『3000年の密室』で長編デビュー。ロマンティシズム溢れるテーマを、揺るぎない論理で展開する知的な作風で、多くの熱狂的な支持を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つたもみじ
27
南美希風シリーズ第四弾。文庫で1240頁という長篇。長かったので数日掛ったけれど、面白かった。伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が、そのまま最初の事件…三重密室へと繋がり。そこから冗長さの欠片もなく次から次へと事件が起きる。密室、密室、そして密室。その全てが一つの舞台のように装飾的。機械的に密室トリックを崩せば、同時に心理的なトリックに陥る。真犯人に関してはチラッと頭を過っていたのだが、著者の目眩ましにまんまと嵌ってしまった。伏線もキッチリ回収してあり大満足な一冊。密室モノ好きさんには全力でオススメしたい。2015/09/09
ダークスター
10
1240貢、長かったですが、最後まで楽しめました。他の南美希風シリーズも、是非とも読んでみたい。2017/12/17
yucchi
10
長かった‼︎‼︎読み終えた達成感は半端ない。初めて文庫本見た時、あまりの分厚さ(約4.5cm)に爆笑した。題名に違わず、密室密室また密室。一つの密室が他の密室トリック解明に影響を与えるので、どの手がかりを信用して良いものか...。トリック解明時にもう少し図解が欲しかった。真犯人が明らかになった時には「そりゃないわ〜」と思ったが、確かに伏線はある。 面白かったので伏線を回収しながら再読したいけど、これ再読するの相当気合い入れないとな。第8回本格ミステリ大賞の候補作だが、この年はレベルが高かったと思う。2014/04/17
浅木原
9
あらゆる意味での物量で読者を無理矢理ねじ伏せる無慮1200ページ。個人的に何にねじ伏せられたかというと、第一の密室の構図が作品全体の構図と重ね合わせられることで、「あの真相」が成立してしまうという事実。どう考えても100%脱力するはずのものをこの暴力的物量の長編の真相に設定して1200ページ読んだ読者を納得させようという暴挙、そもそもやろうとした時点で正気の沙汰ではないし、納得させられてしまったので降参するしかない。「納得するしかない反則」というこの逆説的構図が最大のトリックだ。参りました。2017/06/26
73番目の密室
9
長い、長すぎる…と読んでる最中は只管呻いていたが、解決編の見事さで全部水に流したw題名に違わず5つの密室事件が登場する本作、しかしトリックそのものよりも「どうして密室が出来たか」というその理由や動機に重きが置かれている。最初の4つは理屈が強引過ぎたり図がイメージしづらかったりで辟易しかなかったが、最後の密室トリックには目から鱗。やっぱりこういうシンプルに読者の盲点を突く密室が好き。旧家で起こる大仰な惨劇の数々は古き良き戦後ミステリを彷彿とさせ、密室よりこちらの雰囲気を前面に押し出した方が良かった気もする。2015/10/13