内容説明
誰にも愛されず、孤独に苛まれてきた彰子は、会社を辞め北海道へツーリングの旅に出た。目指すは道東・冊琢内湖畔にある一軒のカフェ。大自然と人々のぬくもりは、彰子の心を救ってくれるのか(表題作)。納豆かき混ぜ箸という過酷な運命を巡り、翻弄される箸たちの葛藤を描く「納豆箸牧山鉄斎」ほか、諧謔とブラックユーモアに満ちた傑作奇想小説六編を収録。
著者等紹介
東直己[アズマナオミ]
1956年札幌生まれ。北海道大学文学部哲学科中退。’92年、ススキノを舞台にした『探偵はバーにいる』(早川書房)で作家デビュー。以降、ススキノ便利屋シリーズを発表し続け、気鋭のハードボイルド作家として注目を浴びる。2001年には『残光』(角川春樹事務所)で第54回日本推理作家協会賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tu-ka
33
6篇から成る短編集。読書スランプを断ち切ろうと読み始めたが、想像していた内容とはだいぶちがっていた。表題作は最後のどんでん返しが強烈すぎてあっけにとられた。それ以外の話はホラ話の集合体ではなかろうか。でも最終話の「間柴慎悟伝」は面白かったかな。人面瘡は謎だけど。2014/08/03
sk4
26
伊坂幸太郎さんがエッセイの中で「おもしろい」と書いていたのを覚えてて購入。筒井康隆さんのショートにも似た理不尽感が漂う。 冒頭のライダー定食で、『ライダー定食』ってそういう意味だったの?という理不尽に首を傾げながら、これが伊坂幸太郎さんの好みか・・・と反芻。 冗長で読みにくい短編もあったが、他にも『納豆箸牧山鉄斎』と『炭素の記憶』と『間柴慎悟伝』は引き込まれた。 …(本文より)「しっかりしろ慎悟!」朦朧とした慎悟の視界の中に本堂雅哉の顔が浮かび上がった。 ←(注:この二人はハエですw2012/09/05
ろくでなし@ぐーたら中
22
79点 奇想っぷりがはなはだしい。暴走っぷりにもほどがある。のに着想っぷりが素晴らしい。もうそういう訳で自分の好きなツボら周辺をだいぶ刺激されました。ダークでブラック。元も子もなくてミもフタもない。脈絡もなくて突拍子もない。けど世界の構築具合がすごい。導入部での引き込み方がうまい。ネーミングのセンスが圧倒的。「良い」のと「あんまり」なのとの差はあるものの同じ人が書いたとはにわかに信じ難いほどの幅広い作風。スタイルのなさと独特な表現方法が魅力。うーん何というヘン加減。久々にほぉーと唸った短編集にございます。2013/02/01
星落秋風五丈原
17
「納豆箸牧山鉄斎」では、佐藤家にやってきた箸、牧山鉄斎が、仲間の箸から「自分が納豆箸(納豆専用の箸)にされる」と聞かされる。そこから「箸達のアイデンティティとは何ぞや」「人間は箸をどう考えているか」という激論が始まってしまう。でも実はこれ、箸=人間、人間=神にあてて書いたのかな、と思える節がある。例えば、「我我箸は、人間様の御創りになった体で、人間様が御遣わしになった場所で、与えられた使命に御仕えする(p92)」なんて所。でも、こんな理屈をつけようとする頭の上を、笑いのブルドーザーがなぎ倒しに来る感じ。2008/03/15
やっちゃん
13
自分も北海道ツーリングにハマったおじさんだったので北海道ツーリングの(悪い)雰囲気がよく出てるなと感心しながら読んでたら最後はイヤミスなんてレベルじゃなかった。これはまあ良いとしても残りの作品は最後まで読んだ自分を褒めたい。2021/02/08