内容説明
京都で午過ぎに体があいた私は、ふと、高雄へ行こうと思い立った。北山杉を見、清滝川にかかる橋で和服姿の婦人とすれちがう。一陣の風が吹きあげたとき、婦人は「新さん」と知らぬ名で私を呼んだ。私の口も「勢以さん」と知らぬ名で呼びかけていた。そして二人は北山しぐれに包まれて…(「昔の女」)。慈しみあふれる視線で「女」をテーマに描いた十編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
13
買い本(リサイクル)女シリーズの完全版。この分厚さは読んでいないタイトルがあるのか!?残念、文字が少し大きいとこの厚さになるのでした。懐かしく頁を繰りながら、過去も未来も日本も異国も、あちらこちらを一緒に巡ってきた。時雨、雪、花の香り、夕映え、粒揃いの「旅」(さて、小松さんは現代の若いもんにはどんな感慨を持つのだろう…)2014/10/07
kuro_kuroyon
2
萩尾望都先生の表紙絵、宮部みゆき氏の解説、相当贅沢な作りの本です。小松左京先生たちの世代からの文化が断絶してしまっているように感じるのは自分だけでしょうか。「ありえなさ」だけであれば、十分なファンだジーですが、それだけでは済まさせないところが巨匠の問いかけであり、描き出す世界観です。むしろ今の時代だからこそ味わえる文化かもしれません。在りし日の理想化された日本女性像を堪能するには最高の作品集です。2010/06/25
なつ
0
お気に入りは「流れる女」、「無口な女」。私が生まれるより前の作品ばかりだが、古臭さは感じず、むしろ今時じゃ絶対お目にかかれないであろう楚楚とした態度とか、忍耐強さをもつ女性が逆に新鮮に感じられる。2012/05/09