光文社文庫<br> 狼の血

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光文社文庫
狼の血

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  • サイズ 文庫判/ページ数 720p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784334733315
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

入社して六年のサラリーマン、山本甲介。出世の見込みもなく、雑用を押しつけられる鬱々とした日々。そんな甲介の前に突然、中学時代の同級生・保坂が出現する。今はヤクザとなった保坂は、拳銃と現金の入ったバッグを甲介に託し死んでいった。たまりきった憤懣と怨念が、拳銃を手にしたとき、運命が動く!抑圧される人間の狂気を執拗に描写した新境地の問題作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みも

33
脳髄を揺さぶる物凄い作品だ。認知度や評価が低いようだが僕は大傑作だと思う。主人公の一挙手一投足の細部や些末な状況を、執拗なまでに丹念に累積する恐るべき細密な描写。想像の余地を与えない直截で圧倒的な筆量で究極のリアリティを追求し、巨大都市東京に潜在する憤懣や欺瞞や狂気を見事に描き切る。純文学の心理小説に見られるこういった手法は、目まぐるしく展開するエンタメを望む読者には苛立ちや退屈を齎すだろうが、小説の醍醐味はこういう作品にこそあると、僕は手放しで絶賛したい。大衆迎合しない気骨のある稀有で貴重な作家である。2016/12/26

カラシニコフ

10
しつこいくらいの描写が物語という骨格に肉を与え、かなりのボリュームながら止まらずに読めた。リーダビリティもかなり高いし、なにより主人公はボクらであり、いわゆる普通の人が壊れていく様を見せられ、ボクらもこうなる危険性はすぐそばにあるのだと言われているよう。  ★★★★☆2018/08/25

読み人

6
毎日を鬱屈したなか仕事をこなす主人公。総務に配属され大した仕事もなく日々が惰性に過ぎていく。そんな中、昔の友人が訪れ手元にピストルが残る。警察に届けようとするが流れの中でピストルを使って人を殺してしまう。そこからはもう歯止めがかからず次々と殺人を続けていく。そして罪の意識もないまま自殺をして物語が終わる。共感することは出来ないが破滅に向かう流れに読むスピードも速くなる。バッドエンドのため読了後は重めの印象。2016/08/23

toshi

5
なにしろ主人公がとてもいやな奴。 彼の視点で書かれるせいか、他の登場人物もみんないやな奴、もしくはどうでもいい奴ばかり。 幼馴染のヤクザと娼婦がかろうじて良い人。 読んでいて嫌になってしまう。 最後に意外な人物が黒幕と判明する。 多少の伏線は有るものの、何の脈絡も無く突然判明する感じでちょっと違和感が。 因みに推理小説では有りません。

リードシクティス

3
初めて読む作家。かなりのボリュームにも拘らずのめりこんだ。勤め人をやっている人であれば多かれ少なかれ持っているであろう鬱屈した感情を、ここまで細部にわたって執拗に描いた小説は初めて読んだ。男の朝の髭剃り、歯磨き、洗顔、さらには通勤途中の立ち食い蕎麦屋で天ぷらうどんを不味そうにすする様をここまで丹念に描写した小説はそうそうないだろうと思う。でもこの執拗なまでの書き込みようが異様なリアリティを醸し出していて、人並みに鬱屈を抱え込んでいるサラリーマンの僕はどうにも惹きつけられた。2004/09/10

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