内容説明
フロベールが自己をシャルル・ボヴァリーとエンマ・ボヴァリーに分割して、近代小説を生みだしたように、批評家も、ほんとうは、自己を男軸と女軸に分割しないかぎり、真の意味での近代的批評はつくりだすことができない。この意味で、本書は、たのしく読める「対話による味読」であると同時に、日本では極めて珍しい「本物の批評」なのである。
目次
誘拐されて―紫式部『源氏物語』「若紫」「御法」
ムゥルーィンと鳴く獣―コレット『牝猫』
人生の最初の教師―アゴタ・クリストフ『悪童日記』
男たち―樋口一葉『たけくらべ』
詩人たちと学者たち―A・S・バイアット『抱擁』
松のデザイン―河野多恵子『幼児狩り』『みいら採り猟奇譚』
バーレスクと文学史―ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』
都市を描く―宇野千代『色ざんげ』
酔つぱらひとアメリカ―クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』
ヨーロッパへゆく―パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』〔ほか〕