内容説明
新宿・歌舞伎町で客引きとして生きる花田章は、日本に滞在させるため偽装結婚した中国人女性をふとしたことから愛し始めていた。しかし―。(表題作) 才能がありながらもクラシック音楽の世界を捨て、今ではクラブのピアノ弾きとして生きる元チェリストの男の孤独を描いた「スターダスト・レビュー」など、やさしくもせつない8つの涙の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chiru
130
全編『別れ』がテーマなのに優しい気持ちになれる短編集。表題作は、言葉の通じない中国人妻との偽装結婚。「愛してるから、別れるあなたへ」が切ない…。形だけの夫婦だけど“妻”として変わろうとする健気な姿は心を打たれる美しいシーン。『迷惑な死体』はコミカルな清涼剤🍺 布団で知らない男が死んでいた😱 唐突に登場した「見知らぬ死体」にオロオロするチンピラが面白い💛 どの話も読んだ後、愛しい人がより愛おしくなる。何をしてもうまくいかなかった人生、でも幸せな一瞬があればその人生は“ハッピーエンド”なのだと思う ★42020/07/12
むーちゃん
120
たった今読了。歴史小説以外久々だったため新鮮な気持ちになる。ちょっとだけ心に響く、お酒に例えるとほろ酔いな感じ。43年生きてきたからこそ分かる感覚です。憑神はいまいちでしたがこんな文章が書ける浅田次郎は素敵です。2017/02/13
ケイ
118
ひとつの都市をテーマに、そこを取り巻く恋愛や家族や友情が書かれた短編集のいくつかは、街と人々が絵となり動画となって心の琴線に触れてきた。しかし、テーマが恋愛になると、パターンがあることがどうしても気になり、後半から若干食傷気味に。また、ここにくるか…と。その中では、みんなでしたかくれんぼの話が好きだな。2020/05/09
ふじさん
96
表題作「見知らぬ妻へ」は、借金逃れの偽装結婚をきっかけに、実際に離婚した男が、偽装結婚した中国人女性に恋心を抱くが…という話。「うたかた」は、巣立った子どもを見送り夫に先立たれ、孤独死を選択する老婦人の話。「スターダスト・レビュー」は、才能がありながら、クラシック音楽を捨て、クラブのピアノ弾きとして生きる元チェロリストの男の孤独を描いた作品。好きなのは、以上の作品。どれも家族を題材にしているが、そこにあるのは家族の繋がりからはじき出された人々の心の孤独が描かれている。やさしくもせつない短編集。 2022/02/18
となりのトウシロウ
80
時代も場所も異なる8編からなる短編集。過去と決別した男と女の物語という感じがします。どのお話も過去との対比が物悲しい。幸せな家族との思い出を胸に人生の最期を迎える老母の話「うたかた」。競馬好きな浅田次郎らしく、中山競馬場の年末の有馬記念が出てくる「ファイナル・ラック」での夢のようなお話。そして見知らぬ中国人女性との偽装結婚の表題作「見知らぬ妻へ」では切なさが半端ない。「鉄道員」のラブ・レターに似た作品。これら3つが特に印象に残りました。物悲しく、そして寂しく、切ない、浅田次郎の短編をどうぞ。2023/04/16