内容説明
昭和61年8月18日、上野駅の隣接したホームに前後して到着した上越、東北新幹線の中から女と男の服毒死体が発見された。2つの死体の側にはコスモスと桔梗の花が…。自殺か?他殺か?警視庁捜査一課の吉敷竹史は、不可解な事件の謎を追って盛岡へ。いじめ問題を素材に著者が渾身の筆致で描いた本格推理の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中原れい
44
旧版だったけど検索で見つからず…吉敷刑事、岩手県に出張(またか)ってことで、盛岡や八幡平の風景描写も楽しめた1冊でした。そこに始終立ち込める濃い霧は実際でもあり事件の象徴でもあり、魅せてくれます。あったよねえ葬式ごっことかのニュース、と思いだしもしたり。自分をダメ刑事・ダメ教師と言ってしまうキャラも登場するのはやや古いが、だからといって古びたりはしない話題満載の、チョウセンアカシジミの姿と共に味わい深い作品でした。2018/12/17
coco夏ko10角
29
吉敷シリーズ。葬式ごっこ事件って実際にあったよね…。今回の吉敷はちょっと決めつけが過ぎるというか、ちゃんとした捜査をしてたら助かった人もいたかも。他に動機のある人間はいない、って言うけど、この教師の妻は作品によっては犯人になるよなぁ。別に容疑者じゃなくても普段の教師の様子を知ってる人間として話を聞くために所在確認する必要はあると思うけど…。ラストもそれでいいのかなぁ…。2020/12/13
Tetchy
22
本作のメインとなる殺人事件は、実はさほど興味深いものではなく、真相もショッキングではあるが、私自身が予想していたそれとほぼ同じだった。だが読後の余韻は漠とした何かを残した。2009/04/18
LUNE MER
19
本作での吉敷は自分の推理に引き摺られてしまい、結局のところ、食い止められたところも食い止められない。大丈夫かよこいつ?(笑)と突っ込みたくなる本作のバディ・盛岡署の菊池刑事、堅実な捜査で今回も重要なアシストをする札幌の牛越刑事、そして普通のミステリーでは見られないくらい探偵役との人間的な絡み・見せ場の多い容疑者達。そして意外性を追求した薄っぺらさなぞ微塵も感じさせない「犯人」。私が島田荘司中毒に陥った一番の要因は、このような血の通った作品をミステリーで描かれているところにあると思う。2020/06/22
RED FOX
16
「チョウセンアカシジミは日本のごく限られた地域にだけ棲息していましてね」心中死体がY字のように上野駅に到着。葬式ごっこ事件、悲しすぎる。がんばれ吉敷。20年振り再読。2022/04/30