内容説明
庭とはいったい何だろうか。私たちは、時として庭園を訪れたくなるのはなぜだろうか。庭は奥が深い。本書では、庭の本質を死=他界であるという新たな視点をもって、再び京都の名庭に対峙してみたい。庭園が私たちに饒舌に語りかけてくるのである。日本一の観光地・京都でとりわけ見所の多い珠玉の庭園群。最新の研究成果を盛り込みながら、世界遺産を含む27名庭を新たな庭園観で描く。
目次
日本庭園の原形
あの世を再現する
勝者と敗者のモニュメント
一期一会の空間
普請狂・豊臣秀吉の死期と庭
秀吉神格化の阻止と徳川家康
王権としての庭
日本庭園の否定
石庭のエキスパート
庭園史最大の謎を推理する
作者と創建年代の謎
反骨の天皇の内なる声
著者等紹介
宮元健次[ミヤモトケンジ]
1962年生まれ。’87年東京芸術大学美術研究科修了。現在、龍谷大学国際文化学部助教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
meow3
15
ただ庭の様式や見どころだけを説明するのではなく、作られた歴史的背景なども説明されていて読み応えがあった。銀閣寺を作るのに心血を注ぎ、他の寺社から名木、銘石を接収した足利義政。その死後にそれらをみな取り返されてしまった、というエピソードが好き。2022/06/07
rou
10
夢窓国師の庭に他界が取り込まれていること、権力者が王としての自分に相応しい死を「デザインする」過程に浄土としての庭づくりがあることなどについて等が主に書かれている。大河ドラマ等で描かれるそれこそ銭湯の富士山のカキワリの如き豊臣秀吉像というのがあるが、しかし秀吉が土木建築の専門家という仮説からその技術を戦術に反映してその名を歴史に遺すことに至ったこと、さらには秀吉の技術者としての側面が動機となったのか、西洋技術に基づいた作庭家たる専門家を初めて生み出したこと、それによって近世の庭にはあまたの西欧渡来の技術→2022/10/18
ニッポニア
5
庭にかける人々の情熱、裏話、歴史をからめて紹介している。庭の構造、見方などをもう少し知りたかったかな。2016/06/29
編集兼発行人
5
我国の古都に位置する数々の名庭に関する案内。庭園の本質を他界と定義する観点から京都市や其の周辺における三十弱の名所について絵図や写真を織り交ぜながら各々が数頁程度の分量に収まる範囲でエッセンスを解説するという構成。物質的な構造美や設計思想も然ることながら其の背景に潜む施主や関係者の(場合によっては禍々しい)情念までも理解することにより味わい方が段を上げる感。各章末に要約絵図交通時間料金など必要な情報(二〇〇四年十月時)が纏められており知的好奇心を満たしながらの観賞を満喫できる手軽なガイドブックとして推奨。2014/10/21
ターさん
2
本書は庭園好きにはたまらない。庭園の最も古い形式が「枯山水」これは「岩倉」から起こったという。浄土式庭園の平等院と浄瑠璃寺との比較が面白い。小堀遠州は、庭園界のスーパースターだ。有名庭園には必ず登場する。「造園年代もわからず、作者も知れず、造形の意図も不明、美しいのか醜いのかもさだかではない」龍安寺の石庭。作庭者は遠州の可能性が高いという。その理由は、「西欧手法」「借景の手法」「石庭、庭園のエキスパート」「禅宗」という。桂離宮や修学院離宮は一見の価値がある。タウトの言葉を確認するためにも再訪したいものだ。2023/04/17