感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
42
再読。淡々と読み進めたら、ラストの菊地秀行さんの『ちょっと奇妙な』に心射たれた。ちょっと違和感を醸す近所の綺麗な奥さんに、仄かに心寄せる主人公の切なさ。届かない想いをサラリと描いてみせてくれる。そこにはあざとい気持ちは何も無い。ゾンビや死霊を描くアンソロジーだが、全体に喪われてしまった人々への気持ちが蘇る物語群だった。中井紀夫さんや岡本賢一さんなんかも良かった。2019/04/20
鷺@みんさー
34
やっぱりヤスミンの『ジャンク』いいよなぁ。シビレルゥ!篠田真由美のカトリック狂信、安土萌のきゅんみな妹、小中千昭のタクシー怪談、倉坂鬼一郎の土着閉鎖村、江坂遊のギャングSS、かんべむさしは流石の噺家譚、加門七海流『桜の森の満開の下』ならぬ『鈴虫の籠の満載の寺』とでもいおうか。北野勇作は素敵に頭おかしいし(誉め言葉)、森奈津子には素直に感動させられた。友成純一の物体的痛エグさは、女子高生コンクリ詰め事件を思い出させてダウナーにさせるし、井上雅彦『青頭巾』はキュートで残酷。色々楽しめた一冊だった。2020/03/05
那由多
11
書きやすいテーマだったのか総じて良い物が多く、レベルが高めのアンソロに仕上がっていて『異形コレクション』らしさが出ていた。2018/09/25
ひょろ
5
「春の妹」は短いながらも自分好みの作品。「虫すだく」はなんとなく「桜の森の満開の下」を思わせる。「脛骨」はこういう死がいの扱い方もあるかと思った。「黄紗子」は扉絵裏にある通り良識の限界に挑む(いい意味で)問題作。2019/05/28
madhatter
5
再読。カバー裏に「屍者は肉体に拘る」とあるが、そのせいか、恋愛要素・エロス要素を含む作品が結構多い気がする。どちらも肉体が重要になってくる分野だと思うが、故に死を迎え、肉体を損壊された屍者をその中でどう扱うかについて、イマジネーションが膨らむのかも知れない。この文脈で一番良かったのは、津原泰水氏の作品。直接的な性描写は殆どないが、特殊な二つの「屍者」の発想、そしてそれらに纏わりつく、そこはかとないエロス、切ないノスタルジーが堪らなく良い。2012/04/03