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不可能な交換

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  • サイズ B6判/ページ数 222p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784314009065
  • NDC分類 954
  • Cコード C0010

出版社内容情報

朝日2002/2/3「歴史が転換期を迎えたいま、知の策略者ボードリヤールの時代が再びやってきたのかもしれない」

読売3/9、日経3/10「十分に刺激的な現代社会論といえる」、山形新聞2/10、静岡新聞他、
エスクァイア 5月号 評者:後藤繁雄 掲載


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新しいゲームのはじまり、

       ルールは不確実性

あらゆる領域に不確実性が侵入し、
  安心できる世界が終わりを告げるという状況は、
    不確実性自体がゲームの規則になりさえすれば、
すこしも否定的な宿命ではない

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ボードリャールは本書で、二○世紀とともに終わってしまった(あるいは終わろうとしていた)世界と
新たな世紀とともに始まろうとしている(あるいはすでに始まっている)世界を、
独自の発想とレトリックで表現している。
いったい、何が終わったのか。
等価交換の原則にもとづく(と人びとが思いこんでいた)世界である。
いまや「何ものかと交換されることを欲するすべてのものは、
不可能な交換の壁にぶつかるほかはない」のだ。
それでは、何が始まっているのか。
等価物を失って不確実になった世界と、
その反映である不確実な思想の時代だ、
というのが本書をつらぬく発想である。
・・・・
近代社会が、さまざま変転の果てに戦争と革命と収容所の時代をへてたどりついた消費社会は、
「死、幻想、否定性、悪」等々を「呪われた部分」として追放することで
「生、現実、肯定性、善」の全面的な支配を実現したかに見えた。

ところが、高度消費社会が高度情報化社会として展開されてゆく過程で、
現実そのものが記号化され、情報化されて、ヴァーチャルな地平線の彼方に消滅するという「完全犯罪」が起こってしまうと、
主体と客体、現実と幻想、肯定性と否定性、善と悪等々の二項対立とその止揚という、
西欧近代型の思考はその根拠を決定的に失うことになる(ポストモダンの思想のはかないエピソードはこの変化を反映していた)。
主体=ヒトが、客体=モノを支配し、科学が対象を管理するというある意味で安定した構造が、
劇的に(悲劇か喜劇かはいまにわかるだろう)動揺しはじめる新たなパラダイム・シフトの後に出現した不確実な状況のもとで、
異様な変貌をとげる世界を本書はラディカルな語り口で描きだす。・・・

けれども、ボードリャールはけっしてペシミストではない。
政治、経済、社会、文化等々のあらゆる領域が不確実性に支配されてしまい、
すべてがあらかじめ決定された、波瀾を含むようでじつは安心できる世界が終わりを告げたとしても、
「不確実性自体がゲームの規則になりさえすれば」
それはすこしも悲観的な事態ではないと彼は言い、
確実性を捏造して不確実性を追放するのではなく、
不確実性そのものを前提として新しいゲームを始めることを提案するのだ。

      訳者後記 より

内容説明

世界のあらゆることがらに意味と目的をあたえる(=交換可能にする)というわれわれの欲望は、クローンや人工知能を含むヴァーチャル・リアリティの全面化によって、ついに満たされたかのようだ。しかし、ゲームは終わっていない。リアルさや他者性を消去していく世界で、交換可能性(不確実性)自体をルールとした新しいゲームがはじまったばかりなのだ…。

目次

不可能な交換(不可能な交換;最終的解決または不死の存在の復讐 ほか)
変化のフロー生成のサイクル運命の分水嶺(変化のフロー生成のサイクル;運命の分水嶺 ほか)
状況の詩的転移(人工知能(AI)を越えて―思想のラディカルさ
生きた貨幣―幻覚の特異性 ほか)
シャドウイング・ザ・ワールド―世界を覆う影

著者等紹介

ボードリヤール,ジャン[ボードリヤール,ジャン][Baudrillard,Jean]
1929年、ランス(フランス)生まれ。1960年代から80年代までパリ大学ナンテール校教授(社会学)を務める。初期の著作ではマルクスの経済理論にソシュールの記号論を大胆に導入し、現代消費社会を差異のシステムとして読み解く視点を提示して注目を浴びた。その後は狭義の学術的スタイルから離れ、芸術論から技術論までより広い視野から近代性の乗り越えを模索するラディカルな文明批評を展開し、最近では写真集も発表している。また、2001年11月、アメリカ同時多発テロ事件に関する論考を『ルモンド』紙に発表し、大きな反響を呼んだ

塚原史[ツカハラフミ]
1949年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。京都大学修士課程、パリ第三大学博士課程を経て、早稲田大学仏文科博士課程修了。現在、早稲田大学法学部教授。専攻はフランス文学・思想、20世紀文化論
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