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生誕の災厄

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  • サイズ B6判/ページ数 286p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784314001472
  • NDC分類 957
  • Cコード C0098

出版社内容情報

これは痛覚で書かれた本,痛覚で読むべき本である。アフォリズムとは暖のとれない火だと自らを皮肉るシオランの「毒」と「徳」には一層磨きがかかり,内的哄笑を誘う独特のユーモアと強烈なシニシズムは類を見ない。暗黒の詩情に満ち男っぽく屈折した文体で人間観察の鋭さを示したシオランの真髄を,流麗な日本語になった本書において,存分に味わって頂きたい。

★宮崎哲弥さん(評論家)「私のおすすめ」(「i feel」出版部50周年記念号より)★
「 子供の頃、病的に死を怖れていた。死の間際の痛みや苦しみが恐かったのではない。「死」という観念自体に戦き、夜毎、恐慌に陥っていた。
 親たちは、私の恐怖の意味を理解できず、「心の病」のレッテルを貼った。親といえどもまったき他心に過ぎないと確信したのはこのときだ。それ以来、同質の死の恐怖を味わったことがないという者に、自分と同じ内面が宿っているとは思えなくなった。人間にも「種類」というものがあるのだ。普遍的人間性など大嘘だ。
 十四歳のとき、はじめてシオランのアフォリズムに触れた。『生まれたことの災いについて』なる原題のアフォリズム集で、シオランは口を極めて「生」を呪詛していた。
 「生れ出ることによって、私たちは死ぬことで失うのと同じだけのものを失った。すなわち、一切を」
 そこには孤絶した魂の実在を感知できた。左翼思想と訣別した十代の私は、シオランに導かれ、仏教へのとば口に差し掛かろうとしていた。」

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

65
「生誕と鉄鎖とは同義語である。この世に出てくるとは、手錠をかけられることだ。」アフォリズム集。仏教の四苦では生老病死、生を苦の原因の一つとして挙げているが、本書では反出生主義者の面目躍如、生まれるべきではなかったという言葉が山ほど綴られている。どの断片を採っても思いっきり後ろ向きなのだが、そのネガティブの山の中に分け入っているうちに、妙な安らぎ心地よささえ感じるなあ。同時に若かりし頃、後悔に苛まれて眠れない夜を過ごしたことも思い出したけど。「肝心なことはひとつしかない。敗者たることを学ぶ――これだけだ。」2020/03/09

zirou1984

35
20世紀最大の絶望先生、シオラン。彼が抱えた虚無の深さに比べれば、ニーチェが覗き込んだ深淵なんて井戸の底ぐらいにしか過ぎない。思想家でありながら自らの考えを纏めることを放棄し、辛辣さの金太郎飴の如く絶望に満ちたアフォリズムを書き連ねた男。日々自殺について考えながらも、84年間の天寿を全うした者が残した言葉の断片は「この世に生を受けたこと自体がそもそもの災厄だ」と突き放していながらも、何故かそこに不思議と優しさを感じてしまう。大丈夫、例え世界に見放されたって、シオランの言葉は決して君を見捨てたりはしない。2013/03/02

白義

18
シオランは今までこの地球に生まれ存在した人間の中で、最も過激、かつ辛辣な猛毒を吐き続けた思想家です。それは、かれが生まれ存在するということ自体に憎悪というにも冷え冷えとしすぎた醒めた嫌悪と絶望と倦怠を抱き続けてきたからでしょう。存在論的嫌悪という言葉が軽くなる、存在自体への嫌悪、絶望。彼を前にしてはラ・ロシュフーコーは単に機知の利いた小善人でありニーチェは単に熱に浮かされやすい青二才で中島義道は少しネクラなだけの小市民に見えてしまいます。それは彼が絶望からの脱出法すら、死以外には勧めないからです2011/07/31

ドン•マルロー

17
シオランからすればニヒリズムやペシミズムなどの形容さえ生ぬるい。ある傾向にある思想の終着点となることは間違いないだろう。2018/07/15

ふるい

16
一年半かけて寝る前に少しずつ読んだ。シオランの言葉に「そうだなあ」とうなずきながらいつのまにか寝てしまう。敗者の至福と言わずしてなんと言おう。2020/07/21

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