内容説明
黄金時代―著者自身がそう呼ぶ「光りかがやく子ども時代」(十二歳=終戦前まで)を飾らない筆致で回想する作品群。オリジナル編集のエッセイ集。『狐のだんぶくろ』のほとんどを収録するほか、『玩物草紙』や文庫未収録作品も多数掲載。飛行船、夢遊病、骨折とギブス、昆虫採集、絵本、替え歌遊びなど、エピソード満載のノスタルジアあふれる幼少年期の思い出。
目次
幼年時代(最初の記憶;ある雨の日 ほか)
少年時代(変身;左利き ほか)
楽しみあれこれ(双葉ガ負ケタ!;弾丸力士 ほか)
戦争の音(記憶力について;欠乏の時代 ほか)
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928‐87年。東京生まれ。本名龍雄。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介するかたわら、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
34
澁澤龍彦氏自身、幼年時代・少年時代、他エッセイを加えてまとめられた本。昭和初期という戦前のまだ若干落ち着いていた頃に見聞きし体験したことが書かれていて興味深く読むことができた。特に幼年時代は誰もが持っているおぼろげであり、ほんとうかどうなのかわからないのに鮮明な記憶。以降氏が書く事になる多くの著作にとてもおおきな影響を与えているのではないかと感じた。2015/03/20
スエ
4
「戦時下の生活がどんなに不自由かつ苦しいものだったとしても、昭和二十年以前、つまり私の黄金時代は、私にとって光りかがやいている」。意外にも健康的でのんびりしたエピソードが多く、三島の仮面の告白的な内容を想像していた私は少々肩すかしをくらいつつ、でも微笑ましく読ませていただいたのであった。こんなふうに少年時代を回想できるのは素晴らしいことであると。2016/07/24
バジルの葉っぱ
3
澁澤氏の少年時代なので、さぞやいろいろと早熟で普通の子どもより複雑に屈折してるんでは…との期待を他所に、意外に普通の育ちのよいお坊ちゃんという印象だった。私の父母と数年しか違わないほぼ同年代なので、時代的に父母の子ども時代の話と重なり興味深く読んだ。2013/08/14
もぶこさん
3
澁澤龍彦さんをやっと読めた。彼の幼少の地元が一緒で一気に親近感が沸いた。おびんづるさま、チンドン屋。蓮馨寺のケイの字は昔は慶、だったのかしら。こんなおじさまと話をしたら楽しいだろうなあと思う。ビアズリーなど好きなものも似ている気がする。いよいよガストンバシュラールを読むべきか。2012/05/21
amino3
3
幼少時代の話をしていてさえ、ヨナ・コンプレックスやらフロイトやらを冗談まじりに引いたり、好きなクラシックが幻想交響曲や春の祭典だったり、私小説じみた書き方を嫌ったりと、なにかと興味を惹きつける方である。猫にいたずらをする下りなどはほほえましく共感した。漫画「のらくろ」のセリフの格調高さを称賛しており、澁澤氏のハイレベルなジョークもこれに影響を受けているのかもしれない。2012/05/20