内容説明
などて天皇は人となりたまいし―天皇に殉じた青年の魂の復権をめざし、天皇制批判の問題作として“イデオロギー小説か、芸術小説か”と騒然たる物議をまきおこした表題作と、「十日の菊」「憂国」を合わせた二・二六事件三部作。エッセイ「二・二六事件と私」を完全復活させた待望久しいオリジナル版文庫。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925年、東京生まれ。学習院を経て、東大法学部を卒業。16歳で「花ざかりの森」を発表し、天稟を注目される。戦後、「仮面の告白」で作家としての地位を確立。1970年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
225
光はあれども、昏き幽冥の彼方からやってきて、憑り坐しに現れた神霊たち。石笛の響きを伴いながら、怒りと慨きの聲々が繰り返す。「などてすめろぎは人間となりたまひし」。たった2度だけでよかったのだ。後は人間であっても。二.二六の時には、すめろぎが彼らの行為を「嘉納」した幻、そしてもう一つは彼らに「死ね」との下命を賜った幻がありえた。ところが弟神たる特攻に際しては、もはやそれもない。「などてすめろぎは人間となりたまひし」の怨念の叫びは、まさに修羅もののそれに他ならない。彼らは、こうして修羅を彷徨い続けるのだ。2015/01/19
白のヒメ
32
226事件に関する三つの作品。世界に類を見ない2千年以上も続いている稀有なる皇室に対して、私も日本人としてとても誇りを持っているし、大切にも思っているので、三島氏の天皇という存在への思いには、シンパシーを覚える。良いか悪いかは別にして、三島氏の226事件への思い入れも理解は出来る。 それにしても「英霊の声」で霊媒に憑りついた霊の話す言葉の美しさといったら。 これぞ日本語の美と唸ってしまった。現代の作家で、果たして、このように美しい日本語を書ける人がいるだろうか。 2014/02/03
かおりんご
25
三島作品は、何度読んでも難しい。でも、言葉がとてもきれいで、こういう表現ができる人になりたいなと思う。憂国が一番心の響いた。軍人の妻たるもの、死ぬときは一緒。そういう気概が私には足りない・・・反省。2013/11/23
やじ
18
英霊の聲、憂国、十日の菊(ニ・ニ六事件三部作)ニ・ニ六事件と私(エッセイ)の4編からなる。英霊の聲。三島の叫びなのか。憂国。切腹のシーン、リアル過ぎ恐ろしさに震える‥さながら体験してしまったかのような錯覚に。十日の菊‥この先どうなるの⁉︎‥まだまだ勉強不足ゆえ、いろいろ理解できず。いくら勉強しても理解できる気がしません。【などてすめろぎは人間(ひと)となりたまいし】この御英霊の方々が硫黄島の方々でないのが残念でした。2015/03/24
ジュンコ
17
二・二六事件三部作。特に「憂国」は三島の美学の集大成。あまりにも美しすぎて、狂気を感じる。この青年将校とその妻の自決という短い話につけたタイトル「憂国」。国を憂う……1970年11月25日につながる何かを見た気がする。2015/06/20