内容説明
タルホ・コスモロジーの一頂点をなす表題作ほか、自伝的題材に想を得ながら、そこはかとない「宇宙的郷愁」と自在な哲学の飛翔が渾然一体をなす「美しき穉き婦人に始まる」「地球」「白昼見」など7編を収録。
目次
美しき穉き婦人に始まる
地球
愚かなる母の記
横寺日記
幼きイエズスの春に
白昼見
弥勒
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bartleby
9
「彌勒」の劇場版を観たので、これを機に再読。改めて読んでみると劇場版はこの難しい作品をなかなかうまく映像化していたんだなと感じさせられた。ショーペンハウエルやアインシュタイン、「六月の夜の都会の空」について語り合っていた少年時代が描かれる第一部から、身の周りのものをほぼ全て質に入れなければならないような生活が描かれる第二部への、その激しい落差が印象に残る。その極貧の生活が描かれ方がかなり微細で、それだけに少し息がつまる思いがするけれど、その分ラストに突然訪れる彌勒のビジョンがより鮮明に感じられもした。2014/04/06