出版社内容情報
ある女子大生が被害者となった毒混入事件を核に、事件に関係した当時高校生の三人の若者がその後二十数年抱え続けた深い孤独を描く。
イーユン・リー[リー,Y]
著・文・その他
篠森 ゆりこ[シノモリ ユリコ]
翻訳
内容説明
一人の女子大生が毒を飲んだ。自殺か、他殺か、あるいは事故なのか。事件に関わった当時高校生の三人の若者は、その後の長い人生を毒に少しずつ冒されるように壊されていく―凍えるような孤独と温かな優しさを同時に秘めたイーユン・リーの新作長編。
著者等紹介
リー,イーユン[リー,イーユン] [Li,Yiyun]
1972年北京生まれ。北京大学卒業後に渡米、アイオワ大学大学院で免疫学の修士課程を終えた後に方向転換し、同大学の創作科に入学して英語で執筆するようになる。2005年に発表した短編集『千年の祈り』で、フランク・オコナー国際短編賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞などを受賞。また文芸誌「グランタ」で「アメリカでもっとも有望な35歳以下の作家」の一人に選ばれる。現在はカリフォルニア大学デービス校で創作を教えながら執筆を続けている
篠森ゆりこ[シノモリユリコ]
翻訳家。金沢生まれ。出版社勤務をへて渡米、ミルズ・カレッジ英米文学修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
169
すっかりこの作者のファンとなってしまいました。いままで日本語に訳された本をこれですべて読んだことになります。どれも同じような感じがなく特にこの作品は、ミステリー的な心理的な部分を多く含んだ物語となっています。アメリカに住みながら、中国の北京での物語をかなりうまく書かれているのではないかと思います。私は東野さんの白夜行のイメージが頭に残りました。2016/12/03
アン
80
何て痛ましく荒涼とした孤独でしょうか。毒を盛られた女性が長い間苦しみ亡くなる事件を軸に、青春を共にした三人が抱えた心の闇を丹念に掬い上げています。根拠のない希望、無邪気と残酷の境界、他者との共有における恐怖心。鍵をかけるように、誰とも真に心を通わす事が出来ない不信感は、中国の歴史的要素も一因なのでしょう。リーにとっての目は心の窓のようであり、登場人物に鋭く迫り顔を背けず見つめ続けるものなのです。モーランの心の傷を癒し人との繋がりの尊さを導いてゆくリーの眼差しに、静かな愛と温もりを感じずにはいられません。 2019/05/19
どんぐり
73
主な登場人物は如玉(ルーユイ)、泊陽(ボーヤン)、黙然(モーラン)の3名。中国名の漢字なので名前が覚えられない。一人は中国に残り、2人は地方都市の小さな一室から北京へ、それからアメリカへ。過去にあった毒混入事件と、その後の彼らの人生。登場人物に魅かれるものがないし、事件の真意もはっきりしないので面白くない。時にはこういうこともある。本作よりも『千年の祈り』を読むべきだったか。2019/05/28
紅はこべ
68
天安門事件の直後、クリスチャンの姉妹に育てられた孤児の少女如玉が教育を受けるために、北京に送られる。彼女の出現は北京育ちの幼馴染みの泊陽と黙然、彼らの姉的存在の女子大生少艾の運命を大きく変えることになった。少艾が何者かに服毒させられる事件が背景にある。三人とも幸福になれず、家庭も築けず。他者との繋がりを徹底的に拒む如玉の冷たさが原因にあるようだ。如玉に出会わなければ、少なくても黙然は普通の幸福な家庭を持てたろう。平凡だが心優しい黙然と、闘士だった少艾は、やはり如玉にとって敵だったのかな。2015/08/05
おさむ
58
いま最も世界で読まれるべきだと思う「中国のチェーホフ」の異名をもつイーユン・リー。この4作目も毒物混入というサスペンス要素を織り交ぜつつ、米中の2つの舞台を合わせ鏡に、20年もの時の流れも踏まえながら双方の文化や国民性の違いを浮かび上がらせる手法はお見事。一方で幼い頃の記憶が人生に多大な影響を及ぼすこと、心を閉ざし孤独に暮らす現代人の淋しさなど普遍的なテーマも描く。300ページを超す長編でしたが、一気読みでした。2016/02/15