出版社内容情報
74歳、ひとり暮らしの桃子さん――新しい「老いの境地」を描いた、第54回文藝賞受賞作。齊藤美奈子氏、保坂和志氏、町田康氏絶賛
内容説明
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫に死なれ、子どもとは疎遠。新たな「老いの境地」を描いた感動作!圧倒的自由!賑やかな孤独!63歳・史上最年長受賞、渾身のデビュー作!第54回文藝賞受賞作。
著者等紹介
若竹千佐子[ワカタケチサコ]
1954年、岩手県遠野市生まれ。岩手大学教育学部卒業。55歳から小説講座に通いはじめ、8年の時を経て『おらおらでひとりいぐも』を執筆。2017年、第54回文藝賞を史上最年長となる63歳で受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1047
作者より12歳年長の桃子さんを措定し、共通語で語る桃子さんと、東北弁※で語りかける彼女の内声とのダイアローグといった構造を持つ。その内声は、時には桃子さんの幼少時の回想であったり、潜在意識が顔を出したものであったりする。なお、先天的な左利きを右利きに矯正するのは、その身体表現である。また、最愛の夫、周造の死は桃子さんにとっては大いなる哀しみであると同時に「ひとりいぐ」ことを促す喜びでもあると、ここでも両義的な意味を付与されていた。畢竟、この小説はダイアローグの形式をとりつつも、作者自身のモノローグである。2018/02/25
鉄之助
819
呼吸するようにスルスル読めた。それは、東北弁がちょうど良く混じった文体だったから。故に、この本をより楽しむためには音読するに限る!とも思った。東北弁に対する表現も面白かった。「好ぎなのに好ぎと言えないもどかしさ、嫌いなのにやんだと言えないじれったさ みでな~」。わかる同感、同感! 極めつけは、方言とは「小腸の柔毛突起」。心の内を見事に表現、感服した。「上野駅に降りたったときのあの心細さ、それでいながら何とも言えない開放感」。私も、同様のシーンを身に染みて感じた世代だ。若竹さん、名作をありがとう。2021/10/17
starbro
802
第158回芥川賞候補になって直ぐ図書館に予約したので、比較的早く読めました。インパクトのあるタイトルと老齢の域に達する女性の心情が活き活きと描写されていて、芥川賞らしい作品です。次回作にも期待したいですが、2作目以降売れずに消えて行く作家にはならないようお願いします。2018/01/27
zero1
746
孤独と回想は現代老人の常か。24歳で結婚が決まっていた桃子は逃げるように東北を出て東京へ。子ども二人を育て夫とは死別。74歳の彼女は娘からの電話を待つ独居老人。モノローグではなく語り手がいて標準語で話す一方、桃子は東北弁。思考が飛ぶのと同様、これは間違いなく技巧で芥川賞の選考委員もこの点について述べている(後述)。方言は「壬生義士伝」(浅田)を思い出す。人としての年輪と多言語の妙は流石。芥川賞作品は売れないことが多いものの、この作品は別。「日の名残り」(イシグロ)とは違う老境の描き方が共感を呼んだか。2020/04/07
ウッディ
709
夫に先立たれ、子供たちも自分の元から離れ、一人暮らしをする桃子さん。話し相手もおらず、一人で会話する時、なぜか昔に捨てた故郷の東北弁、そんな孤独な老女の心の叫びを描いた芥川賞受賞作。短いにも関わらず、なかなか読み進めることができなかった。馴染みのない東北弁は、すんなりと頭に入って来ず、著者が伝えたことがわからなかった。ただ、孤独であるという寂しい雰囲気、脈略なく頭に浮かぶ過去の記憶の切なさは、心に刺さった。ともあれ、芥川賞作品とは相性が悪いです。2019/06/08