内容説明
須賀敦子、のこされた29のエッセイ。
目次
七年目のチーズ
ビアンカの家
アスパラガスの記憶
悪魔のジージョ
マドモアゼル・ヴェ
なんともちぐはぐな贈り物
屋根裏部屋と地下の部屋で
思い出せなかった話
ヤマモトさんの送別会
私のなかのナタリア・ギンズブルグ〔ほか〕
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929年兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。1953年よりパリ、ローマに留学、その後イタリアに在住し、1961年ミラノで結婚。数多くの日本文学の翻訳紹介に携わる。夫の死後、1971年帰国。上智大学比較文化学部教授。『ミラノ霧の風景』で、1991年講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞。1998年逝去
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はたっぴ
86
須賀さん4冊目。一日の終わりに自分へのご褒美に読みたくなる作品だった。須賀さんに朗読してもらっているような気分で、ゆっくりゆっくり味わう。29編のエッセイは短いものが多く、とても読みやすい。そしてどの登場人物にも親しみを感じてしまう。読んでいるうちに、15年前に両親を連れて旅したローマ、ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、アッシジの風景が目の前に甦り、住んだわけでもないのに郷愁にかられてしまった。過去の遺物をそのまま残して、歴史を重ねていく国を、生活の場として選んだ須賀さんの魂に深く感化されつつ読了。2016/05/10
かりさ
56
遠い異国の街並み、石畳、風景を流れる川や丘。須賀さんのイタリアでの生活を記憶を織り交ぜて書かれた29編のエッセイ。端正な文章がとても心地よく、何度も何度も行きつ戻りつしながら浸っていました。解説の江國香織さんの須賀さんの御本を読むと「雨が降っている気分になる」にとても共感しました。そしてそれは雨の日の読書がとても特別なこと、それが須賀さんの本であることに、ことさらの特別感を味わう読書の時間なのです。豊かでふくふくと気持ちが温かく膨らみ包まれるような安堵感。須賀さんの文章にはいつもそんな感覚を思います。2015/09/17
U
50
刊行の2003年当時、単行本に未収録だったエッセイを中心に纏められた一冊です。解説が江國香織さんという、わたしにとっては非常に嬉しいおまけつき。今までによんだ『ユルスナールの靴』『トリエステの坂道』『ヴェネツィアの宿』『コルシア書店の仲間たち』が、濃厚な味のバニラアイスだとしたら、本作はさらっとした甘さをもつ、果物のシャーベットのよう。凛としていて静謐な雰囲気の漂う文体は、何気ないお話のなかにもあらわれており、よんでいて心の波が平らかになってゆくのを感じました。2015/09/04
Eee
36
ひとつひとつがあっさりとしたエッセイでした。イタリアに行ったことはないですが、その場所に立ったような気持ちで読み進めました。あとがきの江國さんが記されたように、どこか雨が降っている気がしてなりませんでした。実際に降っているわけではないですが、しっとりとしてほの暗い感じ。綺麗な日本語と素敵な情景に魅了されました。、2016/07/04
吟遊
11
すごく短いエッセイが収められている。未刊だったもの。美しい。須賀敦子さんの文章はゆっくりとしか読めない。適正な速さがある。2016/03/16