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内容説明
100年前から行方が知れなかったハガダーが発見された―連絡を受けた古書鑑定家のハンナは、すぐにサラエボに向かった。ハガダーはユダヤ教の祈りや詩篇が書かれた書で、今回発見されたのは実在する最古のものと言われ、ハガダーとしてはめずらしく、美しく彩色された細密画が多数描かれていた。鑑定を行なったハンナは、羊皮紙のあいだに蝶の羽の欠片が挟まっていることに気づく。それを皮切りに、ハガダーは封印してきた歴史をひも解きはじめる…。翻訳ミステリー大賞受賞作。
著者等紹介
ブルックス,ジェラルディン[ブルックス,ジェラルディン][Brooks,Geraldine]
オーストラリア生まれ。シドニー大学卒業後、シドニー・モーニング・ヘラルド紙で環境問題などを担当。奨学金を得て、コロンビア大学に留学、並行してウォールストリート・ジャーナル紙でボスニア、ソマリア、中東地域の特派員として活躍、その経験をもとに2冊のノンフィクションを執筆する。2001年に、『灰色の季節をこえて』で小説デビュー、好評を博し、2006年『マーチ家の父―もうひとつの若草物語』でフィクション部門のピューリッツァー賞を受賞した
森嶋マリ[モリシママリ]
東京都生まれ。武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆかーん
64
まさに「来歴」というタイトルに相応しい古書を巡る物語。数百年前の古書「ハガター」に残された傷痕やシミには、歴史を紐解くヒント隠されています。古書鑑定士のハンナは、残された残留物を調査し、古書に秘められた真実を追いかけます。鑑定士の仕事は、その時代を生きた人々の奇跡を掘り起こしていく重要な行為。第二次世界大戦時にイスラム教の学者が「ハガター」を救う話や、17世紀のユダヤ教とキリスト教の対立など、読めば読むほど興味深い史実が浮かび上がってきます。下巻でどんな結末が待ち受けるのでしょう…。続きが気になります!2016/12/15
キムチ
30
ピュリツァー賞作家でありつつも前作とはがらりとスタイルを変えた歴史宗教作品。ユダヤ教ありき、そしてキリスト教が出来、イスラム教が完成する。もとは一つでありながら、エルサレム帰属の紛争の火種となっている宗教問題。この本は15Cスペインで作られるも紛争のごたごたで行方が解らなかった禁断の書「ハガタ―」を追う。学芸員の力で奇跡的に守られサラエボで見つかり、500年に渡る歴史の歯車がじりっと動き出す。読み手は「紙の本」に秘められた神秘的な香りを様々な物質と共に修復作業で辿る。2014/12/23
RIN
22
古書保存修復家ハンナが手繰り寄せる、500年前に作られた古書が現代まで生き遺った来歴を辿る物語。題材となっている「サラエボ・ハガター」は実在しピンポイントで実話も挿まれている。ハガターはユダヤ教の祈祷書なので、物語は欧州におけるキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の対立、迫害、共存等々の宗教史政治史が下敷きになっている。現代まで絶えることなく続く宗教戦争の下地や、先の大戦でホロコーストを行いながら比較的安易にドイツが欧州諸国に受け入れられてる点も読んでいると合点が行き興味深い。2014/11/05
Yoko
17
長いこと積んでしまっていたけれどずっと読みたかった作品。一冊の希少本をめぐり、その歴史を紐解く中で明かされる本と人々の数奇な運命。そのストーリーの持つ力も構成も申し分ないが、残念なのは私の見識。時代に翻弄されたユダヤ人についてもっと知っておきたい、そう強く思う。2015/10/18
kochi
14
ボスニア紛争の戦火の中、ムスリムにより保護され、後に発見された貴重なハガダー(ユダヤ教での宗教的な書物)の鑑定修復を依頼されたハンナは、羊皮紙から得られた痕跡(留め金の跡、蝶の羽、ワインの染み、白い毛など)を分析し、ハガダーの由来を探る… 古書とそれに関わった人々の運命と、ハンナ自身の物語(主として母親との対立)が、ほぼ交互に語られ、上巻では、ナチによる迫害から17世紀のヴェネチアでの異端審問の一幕まで。冒頭のハイネの警句ー「書物が焼かれるところでは最後には人も焼かれる」が一つの通奏低音のように聞こえる。2022/12/27