灰色の季節をこえて

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  • サイズ B6判/ページ数 420p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784270006894
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

1665年春、イングランド中部の村がペスト渦に襲われた。村に腰を落ち着けたばかりの仕立て職人が、首にできた瘤から悪臭を放って死んだ日が始まりだった。すべてを燃やせ!―仕立て職人の遺した言葉も村人は聞く耳を持たなかった。まもなく病は燎原の火のように広がりはじめた。18歳の寡婦アンナの家も例外ではなく、幼い息子二人をたちまち死神が連れ去った。底知れぬ絶望と無力感に覆われた村では、やり場のない怒が人々を魔女狩りへと駆り立て、殺人事件さえ起きた。アンナが仕える若き牧師夫妻は近隣に疫病が広がるのを防ぐために、村を封鎖してこの地にとどまり、病に立ち向かうよう呼びかけた。だが、有力者一族は村を見捨てて立ち去り、死者はとめどなく増え続ける…。史実をもとに、巧みなストーリーテリングと瑞々しい感性で綴られる、絶望と恐怖、そして再生の物語。著者を歴史小説界の頂点に押し上げた記念すべきデビュー長篇。

著者等紹介

ブルックス,ジェラルディン[ブルックス,ジェラルディン][Brooks,Geraldine]
オーストラリア生まれ。シドニー大学卒業後、シドニー・モーニング・ヘラルド紙で環境問題などを担当。奨学金を得て、コロンビア大学に留学、並行してウォールストリート・ジャーナル紙でボスニア、ソマリア、中東地域の特派員として活躍、その経験をもとに2冊のノンフィクションを執筆する。2001年に、『灰色の季節をこえて』で小説デビュー、好評を博した。2006年、『マーチ家の父―もうひとつの若草物語』でフィクション部門のピューリッツァー賞を受賞、3作目の『古書の来歴』(いずれも武田ランダムハウス)もベストセラーとなり、20ヵ国語以上に翻訳される

高山真由美[タカヤママユミ]
1970年、東京生まれ。青山学院大学文学部卒業。日本大学大学院文学研究科修士課程修了。会社員、教員を経て翻訳者に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

RIN

28
『古書の来歴』のブルックスのデビュー作。黒死病が猛威を振るっていた17世紀のイギリス。突如疫病が発生した田舎の村での1665年から1年余りの日々を村人・アンナの手記風に描いた物語。牧師の主導で自発的封じ込めに踏み切った村人たちの生と死、希望と絶望。。。淡々と日々の出来事と心の嵐や喜びや安堵や絶望が綴られるだけなのに、読みだすともう目が離せない。『古書~』同様、信仰、宗教が社会や人々に及ぼす影響が緻密に描かれる。結末に向けての意外な、そして怒涛の展開に「またこの作家の物語を読みたい」と思わせる良作。2016/12/17

やまぶどう

20
面白かった! 17世紀のイングランドの村に黒死病が発生、流行する。閉鎖された村の中で人は病に倒れ、死が蔓延し、残る人々は壊れていく。不安と恐怖にかられ極限状態に陥った人々が繰り広げる邪悪なできごとのなか、清廉潔白な人々の美しさ、そして村の自然の描写の美しさが心を打つ。畳み込むようにこうした対比が描写されていて感嘆、思いもよらぬ人に隠された邪悪さに驚愕もする。主人公の心身の強靭さとともに、明るく広がる未来に救われる。良い本との出会いに感謝。ブルックスの「マーチ家の父」も読んでみたい。2012/08/20

ぱせり

16
強い力でぐいぐい引っ張られるように読んだ。この死の牢獄から解放されたあと、人は、自分に遺された物の中から、何を選ぶのか。生きる、ということは、なんと厳しくなんと力強く、醜いものなのだろう。だけど、がむしゃらに、ただ生きる、生かす、生きのびる・・・これだけが、命あるものの、究極の善なのかもしれない。 2012/06/08

りつこ

15
辛い話だったが、主人公の不屈の精神、生命力に救われた。疫病ももちろん怖いが、極限状態におかれたときの人間の脆さが怖かった。ヒステリックになって誰かを裁いたり、悪魔を信じたり、そういう人の弱味につけこんで金を奪ったり…。信仰の問題は正直ピンとこないのだが、救いにもなるし毒にもなると感じた。泣きながら、でも楽しく読んだ。2013/05/28

ひねもすのたり

12
読友さんの感想を拝見して。 ペスト・村・封鎖・混沌・開放・・あらすじを読むとカミュの『ペスト』を連想しますが本書の上梓は2001年。舞台となる17世紀イングランドの雰囲気や宗教観を丁寧に描いている一方で、その筆運びは極めて現代的。エンターテイメント要素も満載の読みやすい作品に仕上がっています。 特に封鎖された村の中で感染の恐怖に怯えながら「手負いの獣」と化してしまう人間と、それを押し留めようとする神父(信仰)との鬩ぎ合いを描くさまが秀逸でした。 翻訳の巧さもありますが、海外作品では久しぶりの大当たりです。2013/01/31

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