感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
90
手塚治虫が週刊誌に発表した読み切りの5編。ハッピーエンドの作品はなくて、後味が悪いものばかりなので、気晴らしの読むのには向かない。それでも、人間社会の闇を鋭く描いていろいろなことを考えさせる。私のベストは「カノン」。かなりショッキングな展開で、手塚治虫のニヒリズムを感じる。戦争の残酷さを正面から描いて、人の命を奪う無益な戦いに対する強い怒りが表現されている。同時にかすかな希望も滲ませた感動的な物語であり、これまで読んだ手塚治虫の短編で、これが一番良かった。2017/09/10
AICHAN
38
Book-Off本。表題タイトルの短編をはじめとする優れた短編集。表題の作品も素晴らしいが、この中で私が最も心を捉えられるのが実話をもとにした「ペーター・キュルテンの記録」だ。異常性欲と殺人欲を持つ主人公の物語。最後に法廷で奥さんが叫ぶのだが、そのセリフが耳をはなれない。そこいらの小説なんぞよりずっと素晴らしい作品ばかりだ。手塚作品を読みたいという人には、まずこの作品を勧める。明るいタッチのものがご希望の方には『ザ・クレーター』を勧める。『火の鳥』その他はそれからじっくり読めばいい。2017/10/14
GAKU
34
どの作品も良かったです。やはり手塚治虫さんは凄い。2021/08/08
AICHAN
31
再読。表題作ほか「カノン」「白い幻影」「ペーター・キュルテンの記録」「最上殿始末」を収録。いや~、何度読んでも面白い。2023/09/04
マリリン
30
短編集。「ペーター・キュルテンの記憶」は寄り添う夫婦の共通点、夫の異常な性癖と葛藤と寄り添う妻の複雑な心情が印象的だった。「時計仕掛けのりんご」は、浮気の虫...が緊迫した街の状態の中で著者独特の遊び心か。戦争が絡んだ「カノン」は、祈りにも似た思いを感じ、なぜか心温まる作品。「白い幻影」は、もう少しで読み終える『幻想の脳科学』の内容を思った。「最上殿始末」も、時代背景を思うと実際このような事もあったのではと思わせる作品。 あまり多く読んでいないが、手塚作品、これから少しずつ読んでいきたいと思う。 2019/09/28