内容説明
慶応四年、西軍・長州藩の間諜・物部春介は修験僧に扮していた。木戸孝允から新発田藩での一揆使嗾の命を受けて、成功。次に武器商人スネル兄弟経営の商館を潰すため新潟へ。長岡の元博徒・布袋の寅蔵は、家老の河井継之助に信服して組を解散。以降、継之助のために動いている。会津藩政務担当家老・梶原平馬は、奥羽越列藩同盟結成を機に、北方政権樹立を夢みる…。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年山口県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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姉勤
27
戊辰戦争における奥羽越列藩側と討伐軍側の歴史の舞台で名を成さなかったスパイや工作員、協力者、いわゆる小物の物語を通して、後世に生きるものの天上からの目線ではない、先の見えない地を這う者の目線で歴史は進む。日毎刷新される、流入する兵器と兵法。旧態依然の象徴たる会津の惨敗。天空にハシゴで登ろうするような愚かさは、如何に貴き「士魂」を秘めようと、「土塊」にも似た価値なきもののに堕する。魂など、入れ物たる肉体が生き残ってから考えればいい。 2023/02/28
Akihiro Nishio
24
自分の中の戊申戦争ブーム続く。舟戸与一は、最初に大風呂敷を広げるスケール感と、ちまちま個人の感情など書かないところが大陸的で良い。主人公は長州藩と長岡藩に仕える間者たちだが、実質的な主人公は、「峠」の主人公、河井継之助であった。しかし、あえなく長岡城が落城。既に奥州の要所白河口まで取られていて、土方歳三は怪我のため静養中。奥州連合にとって、元新撰組の斉藤一と、鴉組が、少し戦果を上げること以外に、良いニュースはない。圧倒的有利な西軍がずるい策略をやたら使うのは、長州気質なのか?奥州人はうぶすぎる。2017/10/06
ちゃま坊
16
幕末維新。3人の主人公は長州藩桂小五郎の間諜、会津藩松平容保の家臣、長岡藩河井継之助の協力者。戦争なのだから一揆、謀反、暗殺、諜報といった権謀術数の世界がある。奥羽越列藩同盟どうも精神論だけでは勝てない。刀槍の時代はもう終わったと新選組土方歳三や斎藤一に言わせている。この巻北越戦争が終わったところ。2018/06/25
木賊
15
薩摩と並び新政府軍の主力である長州藩、嘗て京都守護職の任にあり朝敵となった松平容保の会津藩、武備中立を唱えた長岡藩にそれぞれ主人公を置き、三者三様の立場から包括的に戊辰戦争の推移を描く。各藩の内情や西軍内・東軍内の勢力争い、小藩の事情、輪王寺宮を推戴しての北方政権樹立構想などが細かに語られていて、非常に面白い。戊辰戦争をここまでがっつり取り上げた小説は初めて読んだ気がする。2020/06/18
眠る山猫屋
10
久々の船戸時代小説。船戸さんはたしか維新側の土地の生まれだったはず。それにしては、ずいぶんと佐幕側に肩入れしているような・・・今のところ、物部春介と寅蔵がそれぞれの立場から暗躍を繰り返し歴史の中で足掻いているばかりだが、時代は苛烈に流れていたのだなぁ。2013/12/01