内容説明
天山山脈の山間の町イーニン。殺されたロシア女性の身元をたどるうち、海津は新疆ウイグル自治区で繰り広げられるイスラム原理派と、ウイグル民族独立を掲げる民族派の対立、哥老会と三合会の抗争、そして公安と軍部の確執の渦中に…。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年山口県生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Katsuto Yoshinaga
12
敬愛する大船戸作品で読メ登録1000冊目!本作刊行の98年に「アフガニスタンのゲリラ組織タリバンが闘争資金確保のためにヘロインを」と言及し、「この広い大陸でおれたちウイグル人、あんたらモンゴル人、それにチベット人や広西チアン人が一斉に蜂起したらどうなるだろう」と語らせる。いま読むと大船戸の“ジャーナリスト”の一面が色濃く、「歴史の流れに身を委せつつ老い自体を愉しめる日本人なんかこれから出現しないだろう」と後の満州モノへの予感も感じさせる。さすがは大船戸だが、本作は痺れるセリフは少なめ。そこが惜しい。2021/12/05
浦
8
こういう終わりだったのか・・・。風景の描写はまったく現地を知らない自分にも浮かんでくるようで、かつ日本語の良さが沁みる表現。そして緊迫感でひりひりするような展開がある。魅力的な登場人物をじっくり揃え、そこからこの終わり方なので、喪失感がすごいな・・・。満州国演義もそうだったが、これが著者のスタイルなのかもしれない。2019/08/15
奥 清衡
1
並盛。
rogouzin
0
結局、最後は皆死んでしまい呆気ない終わり方だった。登場人物の背景などの描写を膨らましておいて、バッサリぶったぎるように死が訪れるのは、個人的にはなにか物足りない読後感となってしまう。2015/11/25
Yoichi Taguchi
0
出張途中で下巻読了。登場人物のほとんどすべてがタクラマカン砂漠の中で散っていくのは、やはり船戸節(滅びの文学)全開。本ストーリーの黒幕とも考えられる公安部の蒋国妹すらも、無能と罵っていた上司に翻弄されて砂塵になろうとしているところで終わる。流砂の塔という題名は良い得て妙。2014/02/20