出版社内容情報
日本人闘牛士の死亡は、演技中の事故のはずだった。ミステリーの旗手・下村敦史が描く、スペインの風感じる闘牛ミステリー。
内容説明
闘牛士になった兄が死んだ。演技で大技に挑んだ末の出来事だった。妹の怜奈は兄の死を悼むためにスペインへと向かう。だがそこで抱いたのは、兄がトラブルに巻き込まれていたのではという数々の疑念だった。なぜ、兄は無謀ともいえる大技に挑んだのか…。真相を探るうち、やがて怜奈は、闘牛の世界に魅入られていき―。著者が15年かけて綴った圧巻の闘牛ドラマミステリー。
著者等紹介
下村敦史[シモムラアツシ]
1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は数々のミステリランキングにおいて高い評価を受ける。同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補、『黙過』が第21回大藪春彦賞候補となるなど、今注目を集める作家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
269
渾身の闘牛小説。亡き兄の夢を引き継いで、闘牛士を目指す妹。男の世界に紛れ込んだ女性、しかも日本人ってことで、モー大ブーイング。でも、スポ根ものというばかりでなく、兄の死の真相をめぐるミステリーであり、闘牛やスペインの文化·ことわざの知識が得られる教養書でもあります。作者の熱い想いをギュッと詰め込んだ、この作品を読んだ者にとって、描かれる闘牛の感動や興奮や衝撃は永遠に消えることはないでしょう。2022/09/27
starbro
250
下村 敦史は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 スペインを二度訪問し、闘牛も生観戦したことがあるので、『カディスの赤い星』のような傑作ミステリを期待して読みました。スペインの情景や闘牛のシーンの雰囲気を楽しめましたが、ミステリとしてはイマイチ、著者15年の情熱をかけた作品とは思えません(笑)スペインや闘牛好き以外の人にはオススメしません🐂 https://www.tokuma.jp/smp/book/b605160.html2022/06/13
しんたろー
191
下村さんの新作はスペインを舞台に闘牛ドラマ&ミステリ…「今度はこれに興味があったのね?!」とファンとして温かい目で読んだが、良くない意味で「う~ん」と唸る内容。闘牛のトリビア的な面白さはあるが、残念ながら主人公・レイナの心情が書き込み不足ゆえ、共感し辛いのが難点。ドラマもミステリも中途半端な印象が拭えず、最終章の種明かしでも蛇足感が......。近作は好調だっただけに、過去の残念作品『告白の余白』に戻ったようで少し心配。大きなお世話だが「熱い社会派」に立ち返って頑張って欲しいので敢えて辛口の感想で御免!!2022/06/24
nobby
162
うーん、個人的に闘牛やスペインへの興味があまり持てなかった故に残念だったかな…闘牛士として亡くなった兄の真相を追う妹。うーん、あんなに毛嫌いしてたのに本場で一度目にしただけで魅了されて自ら目指すとはいくらなんでも強引過ぎ…闘牛そのものを受け入れるお国柄もさることながら、その夢を叶えるために犯罪野放しとか女性蔑視の生々しさなど嫌悪ばかりだった…実際にもそうなのならば、それもまた複雑な思い…終盤ちょっとのミステリ展開はさすが下村さんだけど、最後の設定は蛇足に感じる…そりゃ間違いなくスペインに繋がるだろうけど…2022/06/28
のぶ
151
闘牛の魅力が良く出て面白い小説だったが、欠点も目立つ作品だった。スペインで闘牛士となった大輔。演技で大技に挑んだ末に命を落とす。妹の怜奈は兄の死を悼むためと、真相を知るためスペインへと向かう。そこで怜奈は闘牛を観戦して、その世界に魅せられ、自分が闘牛士になろうと決心する。一方で兄の死にはいくつかの謎があった。その疑念を晴らす必要もあった。欠点は一度見ただけで、闘牛士を目指すというのはいささか軽率な印象を受けた。そのためにドラマが希薄になった気がした。兄の死の真相にも納得のいかない所が目立った感があった。2022/05/08