出版社内容情報
無罪は社会にとって悪なのか。あなたは正義を試される――。本格社会派ミステリー
内容説明
厳格な法の運用ゆえに「無罪病判事」と呼ばれた嘉瀬清一は、結審直後に法廷で倒れてしまう。宣告されていたために有効とされた判決は、逆転無罪。無罪判決は死も同然である検察界。担当検事の大神護は打ちひしがれる。有罪率99.7%の日本でなぜ今!その後、この事件で無罪放免となった看護師が殺されたと知り、大神は嘉瀬のもとを訪れるが、嘉瀬は老人ホームにおり、会話もままならない状態となっていて…。あの判決に何があったのか。“法”は救いか縛りか。
著者等紹介
下村敦史[シモムラアツシ]
1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は数々のミステリランキングにおいて高い評価を受ける。同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補、『黙過』が第21回大藪春彦賞候補となるなど、今注目を集める若手作家である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
338
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第54弾、下村 敦史は、新作中心に読んでいる作家です。成年後見人社会派ミステリ、著者の巧さを感じさせられます。認知症の高齢者が激増する中、法は万能ではないので、こうした悲劇は増えていくものと思われます。2020/05/21
しんたろー
293
下村さんの新作は、ある殺人事件で悪戦苦闘する検事・大神と認知症を発症した判事の孫・幸彦の2本軸で進む話…二転三転する展開は先が気になる面白さだし、健気に頑張る幸彦を応援しながら、ハラハラしつつ読み進めた。知らなかった「成年後見人制度」の現実を絡めて、著者らしく静かに熱く問題提起しているのも良かった。法律の適用の難しさや法曹関係者の矜持も考えさせられたし、人間ドラマの逆転劇まで盛り込んでいるのも拍手!後見人弁護士とマル暴刑事の二人が助演男優賞ものの人物造形がなされ、「下村さん復活!」と素直に高評価したい。2020/06/22
旅するランナー
241
無罪病判事と成年後見制度から繋がっていく、法曹界の土砂降りの雨。白が黒、黒が白になる、どんでん返しの果てに見えてくる真実に誰もが驚愕するだろう。この結末は救いの雨と言えるのだろうか? 「ほう、そう来るかい!」って感嘆のため息が出る、司法小説の名作です。2020/08/09
nobby
239
有罪率99.7%という我が国において逆転無罪判決を乱発する“無罪病判事”の真意とは…その有罪確定ありきな故に癒着を疑心される判事と検事について、逆に叛逆への疑念に繋げるのはサスガ!さらに一般的にあまり知られていない成年後見人制度の闇の描写に、認知症家族の抱える切実な葛藤が心に染みる…その2つの大きなテーマがどう関わるのか中盤まで全く見えなかったが、後半では強引な捻り展開に混乱させられながらも一気に読める!法とは何なのか…誰が誰のために、その基準や根拠の整合性は…各々の立場に翻弄される正義にまた首を傾げる…2020/06/07
いつでも母さん
226
真実は一つ。だがその真実の捉え方は立場によって微妙に異なる。裁判官、検察官、弁護士そしてマスコミを含めた世論。私達は法の下に暮らしているのを再確認させられる昨今。一つの無罪判決から見えてくるものは?新たな事件を引き起こし、張り巡らせた蜘蛛の巣にかすめ足られたのは誰?巧いなぁ。そして交錯する【成年後見人制度】言葉は知っていたけれど、これはもう他人事じゃない。下村さん面白く一気に読了、堪能しました。2020/05/26