内容説明
昔、猟師に子どもを殺された母トラが、憎しみのあまり、夜ごと村をおそうようになった。困りはてた王に、国の占い師が予言する。王子をトラにさしだせば、国に平穏がおとずれると。王は、幼い王子ウェンを森の奥におきざりにするが…?人間を憎みながらも、小さく弱いものを愛する気もちを忘れなかった母トラと、強く心やさしい少年に育ち、人と獣の世界を結ぶ存在となる王子ウェンの姿を描く、心ゆさぶる迫力の大型絵本。2005年ドイツ児童図書賞受賞。
著者等紹介
チェンジャンホン[チェンジャンホン]
陳江洪。1963年中国生まれ。画家、絵本作家。北京の美術学校に学び、1987年パリに移住。フランス国内外で作品展をひらいている。中国の伝統的水墨画の手法を使い薄紙に描かれた、微妙な色あいの繊細かつ迫力ある絵は見る者の心を一瞬にしてとらえる魅力にあふれ、高く評価されている。また、さまざまな国の民話集にも挿絵を描いている。本書『ウェン王子とトラ』で2005年にドイツ児童図書賞受賞
平岡敦[ヒラオカアツシ]
1955年生まれ。早稲田大学文学部卒、中央大学大学院修了。中央大学講師、フランス文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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seacalf
115
寅年にあやかって。かなり大きいサイズの絵本なので大迫力のトラの姿に思わず圧倒される。その体験だけでも読む価値あり。猟師に子供を殺されて人を憎むようになった母トラと、いけにえとして差し出されたウェン王子のお話。表情豊かなトラに、見事な中国の甲冑など見所も多く、母トラとウェン王子との交流場面の数々がじんわりと温かく心を照らす。パリの美術館に所属されている雌トラという青銅器と、赤ちゃんの時にトラに育てられたという男の子がいたという中国の古い伝説からインスピレーションを受けて作られた絵本。2022/02/01
Willie the Wildcat
96
憎しみを癒す愛情。子供の持つ天使のような笑顔と心は、誰の心をも癒す。誰もが持つ心の底の優しさに響く。そして親への感謝の気持ち。そんな親子の愛情の大切さを感じる。無論、親子の愛情は動物の世界も同じ。自然との共存も訴えている気がする。王様・王妃の心の葛藤が、終盤に読み取れたのも救い。最後の成長したウェンと虎の再会シーンが印象深い。”親子”の心の交流。水墨画が心情の深見を重厚に表現している。2012/11/22
☆よいこ
93
絵本。今年の干支トラの本を展示紹介。読み聞かせ7分。大きくて重たいけれど、その分トラの迫力が素晴らしい▽人間に子供を殺された母親トラは村を襲い暴れた。王さまは兵を出そうとするが、占いで「怒りをしずめる手だてはひとつ、ウェン王子をトラにさしだすしかありません」と言われる。ウェン王子は勇敢にトラのもとに行き、トラと暮らし始める。トラは王子を自分の子供のように育て教育する。しかし、王さまは王子を取り戻そうと森に進軍する。ふたりの母親の間でウェン王子は感謝の言葉をいう▽王子かっこいい2022/01/20
クリママ
58
素晴らしい絵だった。良い物語だった。母の哀しみが心に迫る。王子はまさしく王となるべき人だった。「この世でいちばんすばらしい馬」と同じ作者だと知った。どちらも手元に置きたい本だ。2016/06/02
chiaki
53
長女が大好きな1冊を久しぶりに読み聞かせ。ストーリーはさることながら、迫力ある絵も秀逸。母トラを想い、国王夫妻を想い、ウェン王子を想い…何度読んでも胸が熱くなります。この壮大なストーリーをいつか中学年・高学年にて読み聞かせしたいと思いつつ、絵本が大型で重く、どうしても覗き込むような体勢になってしまうので未だ実践出来ずにいます。でも改めて読むと、やっぱりいい!!!自分から手にする子はいないので、やっぱり読み聞かせしなきゃです!2021/06/03