内容説明
空襲で家と家族を失った12歳のハリーは、イギリスの北の海辺を、犬とともに歩いていた。わずかな食べ物を犬と分けあい、親切な人や心に痛みを抱えた人、残酷なゆがんだ人など、さまざまな出会いをくぐり抜けるうちに、ハリーが見出した心の王国とは…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールの代表作。「児童文学の歴史に残る作品」と評価され、世界十数ヵ国で話題を呼んだ。ガーディアン賞受賞、カーネギー賞銀賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
72
空襲で家族を失った12歳のハリー。境遇の悲惨さからは想像できない物語である。彷徨い出会った相棒とも言うべき犬のドン、様々な人達。歩き、空腹を満たし、時に危険に巻き込まれながら、束の間の安寧を得る…教科書通りの規範的な世界では味わえない、生きる実感に満ちている。安全地帯の自由から、責任を伴う自由へ。成長した彼は再び狭い安全地帯に戻される。「好きなようにできる人間なんか、いないんだ」立ち位置の自覚。この結末は反抗期への突入だろうか。父の言葉と共に旅したハリーが、家族を軽蔑したまま海辺の王国に帰るとは思えない。2023/07/14
榊原 香織
53
児童文学の歴史に残る名作、と言われてる 賛成。 ロンドン空襲で孤児となった男の子と犬の道行き。 これは映画に向いてる。2020/10/28
白のヒメ
50
空襲で家族と家を失った少年が、一匹の犬と出合い海辺を彷徨う。生きていくために・・・。様々な人々と出合い、様々な状況に陥りながらも、もがき苦しみながら乗り越えていく。衝撃的な結末は、妙に説得力があり、もし主人公の少年が自分だとしても十分あり得ることだと納得させる力があった。主人公の諦めたような独り言が心に残っている。「それでも生活は続くのだから・・・」この作者の作品は「かかし」を前に読んだことがあったけれど、比べ物にならないほど読後感が重厚だった。大人にしか分からない人生の機微が詰まっている傑作。2016/09/19
眠る山猫屋
48
イギリス版火垂るの墓かと思ったが、読後感がちょっと違うのはお国柄か。空襲で家族を失ったハリーはひとり海沿いをさすらう。まだ12歳、戦時中で人々の心は荒んでいる。自由奔放な相棒・犬のドンは言うことを訊かず、扶養家族を抱え込んだ感じ?ハリーの苦労が偲ばれる(笑)ドンとは食べ物の奪いあいもしばしば。優しい人々もいるが子供の一人旅は通報されてしまう。ハリーは恐怖心から大人を避けるが、苦しめるのは残酷な子供たち。そんな彼が見つけた海辺の王国とは。艱難辛苦を越えて成長した彼はきっと彼の居場所に帰れるはず。2018/11/01
星落秋風五丈原
42
普通なら辛い体験をして大人になって帰ってきた息子と、まさかの再会をすれば、喜びに満ちた家族の団らんになるはずだ。ラストに衝撃を受けた読者が多いようだ。普通なら辛い体験をして大人になって帰ってきた息子と、まさかの再会をすれば、喜びに満ちた家族の団らんになるはずだ。空襲を受けたとはいえ、自身のよく知る世界から一歩も外に出なかった三人と、自分一人で他人の中で過ごしてきたハリーの差は今だけのものなのか。これからも広がっていくのか。微妙な年齢だけに、同じ男性である父親への批判が強まりそうだ。 2022/12/13