内容説明
１９６２年１０月、キューバをめぐる米ソ反応兵器の応酬によって、これまでの国際体制は崩壊した。日本政府は、多角的な視点で新たな世界における長期的な安全保障策を研究する会合を組織し、日常生活を維持しつつ大戦後を生き延びる方策として、最終的に目指すべき場所は地球の外にしかないとの結論を得る。北崎重工から宇宙開発事業団へと転出した黒木正一は、人生最後の熱情をかけて、南太平洋上に建設中の宇宙港・ＪＳＰ‐０３の完成に邁進していた。しかし闇部では旧合衆国テロ集団の恐るべき策謀が渦巻いていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はばたくキツネ
1
三巻王ここに極まれり。ここで終わってしまってもいい具合になっているのがまた憎い。JSP-03…かつてのトラック諸島に建設された洋上宇宙港、発電衛星、宇宙服、宇宙への夢などではなくただ生存の為に生み出された技術がテロの標的となり、それを守る為に軍事兵器として用いられるという皮肉。極めて事務的な冷徹さを装いながらも、芯は大変に感傷的でありロマンチシズムに溢れているのが佐藤大輔の魅力だが、この最新刊(そしておそらく最終刊)はこのシリーズの中でもそれが特に顕れている。2011/08/20
鐵太郎
0
来るべき不可避の第四次世界大戦から逃れるために、日本の首脳部は、日本人だけでも宇宙に退避する道を選びます。そのために、戦争の被害にあわなかった幸運をフルに活用し、なりふりかまわず金をかき集め、惜しげもなく宇宙にそれを注ぎ込む。佐藤大輔はあり得べき未来としてこんな事を考えたようですが、可能でしょうか。その意図を政府の統一見解として固め、日本の一般民衆や世界に対して秘匿しておく事などできるのか。それが察知されたとき、それでも日本の方針に干渉あるいは同調する第三勢力を排除することができるのか。うむ、大輔節。2009/12/06
