内容説明
「風流夢譚」が惹き起こした嶋中事件の後、作者は再びの放浪生活に入った。流浪は憧れであり、存在そのものであり、そして死である。旅のつれづれの出会いと別れ、過ぎゆく名も知らぬ人々との不思議な交流。いっさいの所有やしがらみ、観念を離れ、裸で生きようとする。“住所”も“職業”もさすらいだと言う、これこそ風流だと。囚われない感性と庶民の視点に徹する著者の、飄逸の世界を綴る珠玉のエッセイ集。
目次
流浪の手記
風雲旅日記
いのちのともしび
書かなければよかったのに日記
私の途中下車
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
33
深沢七郎の本が、なぜか、徳間文庫で出ていたとは知らなかった。元本が徳間書店から1967年に出ていたのこと。中公文庫の『書かなければよかったのに日記』『言わなければよかったの日記』との関係がよくわからない。なお、この人については、「ゲイで、アスペルガー症候群の人だった」ということで、かなり理解が可能なような気がする。2019/12/24
Yusukesanta
14
とにかく読めば読むほど深沢七郎という人物がまったく実態が掴めなくなってくるからスゴい。七郎の随筆は、小説とはまた違う次元の得体の知れない面白さがあるのだが、それを説明しようとしても此れは難しい。「ノー・プランの極み」と言えばいいのか七郎が旅に出て、ある人物に出逢ってヨクワカラナイ何かが起こる。「アレ、これ今、オレは何を読んでいるだろうか?」感といったら無い。「おいらは淋しいんだ日記」とか深田久弥に会う話とかの短めの文章に時々現れては消える黒犬が吠えたてるように人類憎悪が必ずや噴き出す瞬間が堪らなく面白い。2016/10/30
hiko1
0
いのちのともしび→著者が流浪の生活をしていたときのことを書いたエッセイ。著者六月の末ごろ札幌にいて、イチゴが山盛りになって売られているのを目撃し、その値段の安さ、食べたときの美味しさにびっくりする。その驚きを「わーっ」と大声を出して表現してしまうところは子どものようである。旬のものを産地でふんだんに食べること、その喩えようのない幸せが行間からにじみ出てくる文章である。2022/02/05