出版社内容情報
「日本に美術館を創りたい」。その夢を追いかけ、絵を一心に買い集めた男がいた。国立西洋美術館の礎“松方コレクション”誕生秘話。
内容説明
「日本にほんものの美術館を創りたい」。その飽くなき夢を実現するため、絵を一心に買い集めた男がいた―。だが、戦争が始まり、ナチスによる略奪が行われ、コレクションは数奇な運命をたどることに。国立西洋美術館の礎であり、モネやゴッホなどの名品を抱く“松方コレクション”流転の歴史を描いた傑作長編。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962年、東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。商社勤務などを経て独立、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年、『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、翌年作家デビュー。12年、『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、17年、『リーチ先生』で新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とし
125
美しき愚かものたちのタブロー 日本の実業家、政治家、川崎造船所社長、衆議院議員でもあった松方幸次郎、日本に美術館を作ろうとした執念は凄いですね。2022/07/18
けいご
95
アートや音楽は無くたって生きていける。ではなぜ人類史からそれらは消える事がなく今日まで育まれ続けているのだろう?それはね、それらの作品がとても大切な誰かの記憶で作られていて、他の誰かもまたその記憶を忘れたくない、そうやって人から人へ過去から未来へ託された記憶のバトン。そうやって文化は育まれているんだよ?っと言われた気がする一冊でした★美術館は誰かの記憶に触れ合える場所で、アートは人間そのもの。だから惹かれ合う作品とそうでないものがあるんじゃないかな。なんてねw2022/10/09
となりのトウシロウ
92
若者に本物の西洋美術を見せるため日本初の西洋美術館を作る事を夢見て、私財を投げ打って買い集めた絵画や美術品、「松方コレクション」。1953年、美術史家の田代雄一、文部省の雨宮がフランス政府に接収されていた松方コレクションを取り戻すためにパリへやってきたところから話は始まる。なぜ実業家の松方幸次郎が絵画(タブロー)を収集するようになったのか、なぜ松方の私財であるコレクションがフランス国に接収されたのか、それまでの経緯は。松方幸次郎やそれを取り巻く人達のタブローにかける想いが熱い。愚か者達の美しい感動ドラマ。2023/04/29
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
91
原田さんは史実にほんの少しの嘘を交えて書くことが上手い作家だと思う。田代雄一と言う架空の人物を通して描く松方コレクション。「日本に本物の美術館を作りたい」と私財を投げ打って名画を買い求めた松方、戦後欧州に留め置かれた松方コレクションを取り戻す為に奮闘した田代。そして戦争の混乱の中タブローを守り抜いた日置。絵画を愛する者たちがいたおかげで私達が日本にいながらにして数々の名画を楽しめるのだ。★★★★2022/12/29
レイコ
74
渇望。喉から手がでる、とか有り余る情熱、とかそんな言葉では表せないほどの強い思い。これからの日本をより豊かにすべく、命をかけて奮闘した男達の物語。日本に決定的に欠けていた芸術という分野。絵でなく人を見てタブローを買う松方、白黒での知識しかなかった作品を目の前にした時の田代二人の思いが逆に羨ましかった。高画質のリモートでいくらでも芸術作品に出会える時代。我々が実物を目にした時の感動は彼等と同じものだろうか。彼等の願いを受け継ぎ次の世代へ繋いでいくことが今の日本人の使命なのだろう。2022/09/28