内容説明
西日を追うようにして辿り着いた北九州の町、若い母と十歳の「僕」が身を寄せ合うところへ、ふらりと「てこじい」が現れた。無頼の限りを尽くした祖父。六畳の端にうずくまって動かない。どっさり秘密を抱えて。秘密?てこじいばかりではない、母もまた…。よじれた心模様は、やがて最も美しいラストを迎える。
著者等紹介
湯本香樹実[ユモトカズミ]
1959年東京都生れ。東京音楽大学卒。処女小説「夏の庭―The Friends」で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同書は映画化・舞台化されるとともに世界十カ国以上で翻訳され、米・バチェルダー賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SJW
195
かつての北九州小倉を思わせる町で、夕日の当たるアパートに母と二人で住んでいた少年の頃の思い出を、大学教授が綴っている。登場人物は母とホームレス同然のこてじいと呼ばれる祖父、地図会社に勤める叔父さんだけ。結局、子供と老人の死というお馴染みのテーマだが、迷惑ばかりかけるこてじいに母親は見放さず、愛情をもって看取る姿はとてもいじらしく、清々しい気持ちになれた。あの高度成長期の西日の当たるアパートを映画で見たような気がする。2018/11/30
相田うえお
189
★★★☆☆でか字で行間が広いし、ページ数が少ないので一気読み。表面上はじいさんと周りにいる身近な親族の話ですが奥が深い内容でした。これ読んだら思い出しました。当方、前に大先生の所に行ったんです。(先生、年取ったな〜)そのとき、次に行く場所迄の道が分からないという話を先生にしたら「地図を書いてやる」と。先生「この道を行くと十字路がある。」と、大きく波打った線を引く。「先生?この道は曲がりくねってますが険しい山道ですか?」「ばかもん!わしゃ手が震えて真っ直ぐ線が引けんのじゃ!」あ〜失礼な発言やらかした〜!2016/10/15
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
172
祖父は不器用なひとだった。筋骨隆々として作業焼けで肌は赤黒く、口数は少なくすぐに手が出る。テレビばかり見ていて肌着で近隣を徘徊して、そんな祖父のことが子どもの頃はこわかった。少し「てこじい」に似てるかな。 今思い出すのは、バイクの後ろに乗って稲穂の匂いを感じたこと。大きくて硬い背中。海の中で揺るがないしっかりとした腕にたとえようもなく安心したこと。 どうして昔の男のひとの優しさはあんなにも伝わりづらくて、こんなにも泣けるんだろう。西日の射し込む白っぽい幻灯の町は、切ない思い出が目に沁みる。2019/10/15
KAZOO
148
湯本さんの4冊目の本です。主人公の幼少の頃の思い出を語っています。母親とその父親との同居などの話からかなり生活としては苦しかったものの、日本の戦後から数年たったころの生活をうまく書いています。距離感のある関係のような気もしますが、雰囲気的には悪くはなくこのような家族の在り方もある、ということを主人公が懐かしんでいる気がしました。2015/11/18
HIRO1970
141
⭐️⭐️⭐️⭐️湯本さんは4冊目。安定した力に毎回驚かされます。季節物3冊の後が西日となりました。日本でも50年代位までの話を聞くと居候だったり、書生みたいな預かりだったり、よく分からない立場の人が家の中をウロウロしています。日本は核家族化で壊れてしまいましたが、東南アジアの家では今でもそうで、何回お邪魔しても覚えられない程、親戚の親戚あたりが家の中をウロウロしています。作者のテーマと思われる老人と子供は今回も鉄板ネタでしたが、気になるほど類似点は無く楽しんで読めました。利害関係の薄い緩い絆がキーかな。2016/09/09