内容説明
「ツバキ姫」との異名をとる著者(水分なしでもパサパサのサンドイッチをあっという間に食べられるという特技のために)が、古今東西、おもにロシアのヘンテコな食べ物について薀蓄を傾けるグルメ・エッセイ集。「生きるために食べるのではなく、食べるためにこそ生きる」をモットーに美味珍味を探索する。
目次
卵が先か、鶏が先か
ウォトカをめぐる二つの謎
旅行者の朝食
キャビアをめぐる虚実
コロンブスのお土産
ジャガイモが根付くまで
トルコ蜜飴の版図
夕食は敵にやれ!
三つの教訓と一つの予想
ドラキュラの好物〔ほか〕
著者等紹介
米原万里[ヨネハラマリ]
1950年生まれ。元ロシア語会議通訳、作家。59~64年、在プラハ・ソビエト学校に学ぶ。東京外国語大学ロシア語科卒業、東京大学大学院露語露文学修士課程修了。80年設立のロシア語通訳協会の初代事務局長を務め、95~97年会長。92年、報道の速報性に貢献したとして、日本女性放送者懇談会賞を受賞した。著書『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店、新潮文庫)で読売文学賞受賞、『魔女の1ダース』(読売新聞社、新潮文庫)で講談社エッセイ賞受賞、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川書店、角川文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社)でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
471
「生きるために食べる」にあらず、「食べるために生きる」という米原万里さんの食にまつわるエッセイ集。今回は、通訳の苦労話や異文化のお話は、いつもに比べるとやや控えめ。もっとも、タイトルの「旅行者の朝食」はロシアの笑話から。なるほどそういう意味だったのか、と納得。本書は、全編にわたって健啖家の万里さんらしさに溢れている。その反動で、かつて『マイナス50℃の世界』では、あんなだった万里さんが大きく変貌することにはなったが。楽しく食べて、楽しく書いているのだから、ご本人はそれでいいのだろう。もちろん、読者もだ。2015/01/30
アン子
165
私も「食べるために生きる」タイプの人間なので共感しか無かった。 現在日本では世界中の料理を食べることができる様になったが、食べるだけではなくシチュエーションや想いによって味や記憶が全然違うものになるって事も改めて認識。 ちなみに私は必ず帰りの飛行機の中で無性に「卵かけご飯」が食べたくなります。 著者の叔父さんの様に死ぬ間際「駅弁は八角弁当にしなさい」みたいな台詞を言えたら幸せだろうな〜2021/02/24
ゆいまある
145
世間知らずなのでこの人を知らなかった。ロシア語通訳者だから自分に縁がないと思い込んでいた。食べ物エッセイ素晴らしく面白い。子供時代をプラハのソビエト学校で過ごした経験から、ヨーロッパ全域の知識も多く、インテリ一族だからか兎に角博識。そして食いしん坊。食べ物の為なら世界中何処へでも行く。ハルヴァというお菓子を探すエピソードの執念がもう凄くいい。未知のお菓子ってワクワクするよね。この本の中の日本は私が子供の頃の日本で、当時一番のレストランと来たら大阪のロイヤルホテルだよなと思ったらやっぱり出てきた。嬉しい。2021/02/14
猿吉君
131
出てくる食べ物がとにかく食べたくなる、知的かつ大食いで早食いの米原節が堪能できる食中心エッセイでした。①超まずい缶詰と幻の食べ物ハルヴァがどうしても食べたくなります、ハルヴァの方はどんな食べ物なのかもよく判らないので興味深々です!②めちゃ寒い時のロシアで魚釣りしたくなります。③1日6食当時のロシアに住みたい。④昔話は実はこうだったネタもそうだったのか!とびっくりします。点数85/100→文章が上手くてネタも面白い、このラインでもって書いて欲しかった、女性版外国まるかじりシリーズみたいでした(^u^)2020/12/25
seacalf
127
久しぶりの米原万理本。博識な知識量と少々ひねくれたユーモア&痛烈なアイロニーがバランス良く、ついニヤリとさせられるご自身の体験談が随所にあらわれ、大変に楽しいエッセイ。通訳で赴くロシアでの経験や子供時代のプラハでの思い出、あまり馴染みのない国での食エッセイ、身近な食べ物の意外な歴史、長期海外生活者が切望する日本食など、ジャンルは多種多様。並々ならぬ情熱を傾けて語られたハルヴァは、なんとしても食べたくなる。ストロガニーナも食べたい!全編、気が利いた話の運びはさすが。今回も愉快な時間をありがとう、万理さん!2017/03/29